とにかく高いものを入れたほうがいい?短いサイクルで安いものを交換するべき?
聞く人によって様々な答えが返ってくる事が多いのが、エンジンオイルだったりします。
しかし、実際のところはどうなのでしょうか。
今回は、知っているようで知らないエンジンオイルの基礎知識をまとめてみたいと思います。
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オイルの種類
カー用品店の棚いっぱいに、ずらりと並ぶエンジンオイル。
あまりに種類が多くて、何を選んでいいのやら…と、悩んだ経験はありませんか?
エンジンオイルにはどのような種類があるのでしょうか。確認してみたいと思います。
まず最もポピュラーなのが、鉱物油です。
鉱物油は、原油から様々な成分(工業製品として必要な成分)を抽出した後の廃油をベースとし、精製したものです。
次に、化学合成油。
こちらは、原油から抽出したナフサという原料をベースに、幾つかの化学的合成を行い、均一な分子構造を造り上げたものです。
鉱物油と比べて、製造にコストがかかる為、高価となってしまいます。
そして最後に、部分合成油です。
これは名前から想像できる通り、鉱物ベースの油と化学合成ベースの油を混合したものです。
鉱物油よりも性能が良く、化学合成油ほど高価ではない。
ある意味、一番バランスのとれたオイルと言えるかもしれません。
さて、ここで「性能」という言葉が出てきました。
鉱物油と化学合成油を比較したときに、大きく違う「性能」とは何の事でしょうか。
それは、「粘度指数」です。
粘度指数とは、温度による粘度変化率を示したもので、大きいほど変化率が少ないという
ものになります。
エンジンオイルは、低温から高温までしっかりと粘度を保っていることが望ましく、一般的には粘度指数が大きいほうが理想的となっています。
オイルによって粘度指数は様々ですが、鉱物油が100前後であるのに対し、化学合成油では150を超えるものもあるのです。
また、求める用途に応じてそれに特化した成分に調整することが化学合成油では可能であり、鉱物油より多くの用途に使用する事が可能となっています。
粘度とは?
オイル缶に必ず表記されているのが、粘度表示です。
「10W-30」といったもので、一般的なユーザーがオイル選びで、まず指標とする値です。
「W」の前の数字を低温粘度といい、40度の時の動粘度を示しています。そして、「-」の後ろの数字は高温粘度、100度の時の動粘度を示しています。
動粘度とはオイルの流れやすさのことで、数字が大きくなるほど硬いので、流れにくくなります。
オイルは低温で硬く、高温で柔らかくなるという特性があるので、低温時は低温粘度が小さいほうがオイルは流れやすく、高温時は高温粘度が大きいほうがしっかりとエンジンを保護してくれるということになるのです。
とはいえ、エンジン毎に適正な粘度はある程度決まっているので、一概に硬くすればいいというものでもありません。
まずは純正の粘度をベースに、少し硬くしてみるといった形で、車の動きを確認してみる
といいかもしれません。
逆に、柔らかい方向に変えてみるのは良くありません。
なぜなら、純正指定よりも柔らかいオイルは、必要な油膜の確保が出来ない為です。
オイルが劣化する原因は?
では、「エンジンオイルが劣化する」といのは、どういう現象なのでしょうか。
一般的に、オイルの保護性能が期待値を下回る状態を想像すると思います。
しかし、実はオイル自体の性能が劣化することは、現代のオイルではあまり起こりません。
もちろん高負荷状態、例えば油温が150度を超えるような状態となってしまった場合に、オイルに添加されている物質が破壊され、性能劣化することはありますが、ベースとなるオイルの性能自体が劣化することはほとんどないのです。
しかしながら、走行距離と共に、オイルは必ず劣化していきます。
それは何が原因なのでしょうか。答えは、ガソリン希釈です。
燃料であるガソリンは、爆発した際に100%燃焼する訳ではなく、微量が未燃焼ガス(ブローバイガス)となり、エンジンオイルに混入します。
ブローバイガスには、ガソリンだけでなく水分なども含まれており、これがオイルと混ざることで希釈され、粘度を確保できなくなってしまうのです。
つまり、どんな高性能オイルであっても、距離とともに性能は劣化していってしまうのです。
添加剤について
この添加剤、配合される物質は様々ですが、添加する目的は性能の向上。
例えば、狙った粘度に届かないオイルに対して粘度を向上したり、寿命を延ばしたり…などです。
「なるほど、では添加剤モリモリなオイルが性能いいんだね!」と思うかもしれません。
しかし、そういう訳でもないのです。
配合された添加剤は、高温になると分子が破壊されてしまうので、一気に性能低下が起こります。
添加剤はオイル作りに必須と言えるものですが、その配合や量によっては、一般ユースには向かないオイルとなってしまうのです。
こういった情報は、オイル缶やメーカーサイトに様々な形で記載されています。
オイル選びには、手に取ったオイルがどういう目的や使用方法を想定しているのか、しっかりと確認することが大切なのです。
エステルって?
エステルは金属に吸着するという特性がある為、粘度を低くしても潤滑性能を確保できるという点、高温下でも油膜保護特性が極めて高い点で、エンジンオイルに非常に向いていると言えます。
また、化学式を変更することが容易であり、特徴的なオイルを作りやすいという自由度の高さもある為、メーカーの方向性を出しやすいという利点もあるのです。
しかしながら、原油からの抽出効率は現時点で低く、製造コストの点から、高価になってしまう事がデメリットとなっています。
普段からモータースポーツに親んでいる方であれば、積極的に使ってみるべきオイルと言えますが、通常の街乗りを中心とした使用では、ややオーバースペックと言えるかもしれません。
冷やしすぎはNG!
しかしながら、それによって冷やされたオイルが、過酷な状況に置かれていることはご存じでしょうか。
実は、オイルが適切な仕事をする温度領域は、90度~120度と言われています。
夏場やある程度負荷をかけた走行であれば、それくらいまで温度は上昇しますが、冬場やあまり負荷をかけない走行では、90度に到達しない事も多々あります。
そうなると、オイルとしてはオーバークール状態。
適正な粘度を発揮できず、大きな粘度抵抗によってエネルギー損失が発生するだけでなく、オイルに含まれるガソリンや水分を揮発させることが出来ずに燃料希釈を助長してしまうのです。
オイルは冷えてなんぼ!と思いがちですが、時々しっかりとエンジンを回してやることで、内部に異物が溜まることを防ぐことが出来るのです。
まとめ
量販店などで棚いっぱいに並ぶオイルは、それぞれ使用用途に応じて適正な性能を発揮するためにオイルメーカーが苦心した結果です。
エステル系など、今後、より性能が上がっていくことが予想される製品がある一方で、用途によっては品質の良い鉱物油のほうがコストパフォーマンスに優れていることもあるでしょう。
利用する我々も、オイルのことを勉強する事で、愛車に最も適した1缶を選ぶことが出来るのではないでしょうか。
是非、次回のオイルを選ぶ時は、いつもより少しだけ多めにオイルのうたい文句に目を通してみてくださいね!