3ピースアルミホイールが「最高級品」と呼ばれる「確かな理由」とは?
特集
アルミホイールの中で「最高級品」と呼ばれる3ピースホイール。
部材の数が違うから?手間がかかるから?と漠然と思っている人もいるのではないでしょうか?
「最高級品」と呼ばれるには「確かな理由」があります。
今回は3ピースホイールが「最高級品」と呼ばれる理由を解き明かしつつ、3ピースアルミホイールの魅力を今一度深掘りします!!
アルミホイールの種類
アルミホイールは「構造(ピース)」の違いで3つに区別されます。
1ピース、2ピース、3ピースがあるのですが、それぞれどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
それを踏まえた上で、3ピースホイールにどんな魅力があるのでしょうか?ご紹介します!
1ピースホイール
製法はシンプルでありながら剛性を確保しやすい利点があり、構造別では圧倒的なシェアを誇ります。
自動車メーカーの純正品やスタッドレスタイヤとセットで販売される安価なモデルは1ピース構造が採用されています。
レース用やサーキットモデルとして販売されているアルミホイールも1ピースモデルがシェアのほとんどを締めています。
ただ、ディスクとリムを一体成形することからデザインの自由度は高くはありません。
2ピースホイール
利点はディスクの溶接位置を変えることでインセットをミリ単位で変えることができること。ダミーのピアスボルトを付けているモデルも多いので車両に装着してしまえば、3ピースホイールと見分けることが難しい事もあります。
価格は1ピースホイールと3ピースホイールの中間に位置することが多いです。
ディスク単体で製造することからデザインの自由度は高いですが、溶接で組み付けるため、リム交換などの修理が安易に出来ません。
3ピースホイール
アウターリムとインナーリムのカラーを変える事もできるメーカーもあります。
ディスクのデザインの自由度は2ピースと同じですが、ディスクをリムで挟む『サンドイッチタイプ』、重ねたリムの上にディスクを置き、ディスクを大きく見せることができる『オーバーヘッドタイプ』、重ねたリムの下から組み付ける『アンダーヘッドタイプ』では2ピースには出来ないリムの上にピアスボルトが隣接するデザインが可能です。
価格も1ピース、2ピースより高額ですがアルミホイールの世界では「最高級品」に分類され、日本国内で製造できるのは5社しかありません。限られたメーカーが毎年ブランドの顔となるフラッグシップモデルを3ピースで発表しています。
3ピースアルミホイールは『最高級品』? 製造現場に潜入!!
そう考えたモタガレ編集部は「なぜ3ピースホイールは最高級品と呼ばれるのか」という点を深掘りするべく、大阪府柏原市に向かいました。
スーパースターは日本国内で3ピースホイールを製造できる5社の内の1社です。
以前、国分事業所にて、3ピースホイールの組み付けの模様をレポートしましたが、今回はディスク、リムそれぞれが、アルミニウムの塊から形作られる模様と共に、3ピースアルミホイールの魅力を探っていきます。
【SUPER STAR】ディスクの鋳造
ディスクの成形はアルミのインゴットと呼ばれる純度の高い塊を炉で溶かすことから始まります。
スーパースターは素材に到るまで国産にこだわることから、インゴットも純日本製です。
インゴットが熱せられ溶解したアルミが炉の中で紅い光を帯びています。
絶対に水分が炉に落ちないように対策されていますが、水分が落ちれば水蒸気爆発を引き起こします。
熱せられたアルミは液状となり、金型へ流されます。
驚くことに、金型に流されてから3分ほどでディスクの原型ができていました。
圧力をかけて金型から外されたばかりのディスクはまだ高温で、人の手では触ることができません。
ディスクは金属製の台座で運ばれ次の工程へ運ばれます。
運ばれた ディスクは冷却水槽で冷ましてからバリ取りの工程に移ります。
金型から外したディスクは最終的な形へ成形された際に十分な強度を得られるよう、分厚く鋳造されます。
それらを高回転のダイヤモンドカッターで切断し、ディスクの形を整えていきます。
これらの工程の中で不良がないかを随時チェックします。
バリ取りまで終えた『ピュアスピリッツ サフォーク XC』のディスク。よく見てみるとスポークの表面に、見覚えのない模様が入っています。
後の切削工程でこの部分も除去されますが、このようにスポークの上部に少し「盛る」理由は
液体となったアルミが金型の中で隅から隅まで流れるように、という工夫の1つです。
バリ取りが済んだディスクは一旦外部の協力会社へ運ばれ『焼き入れ』を行い、さらに強度を高めます。
取材の際に印の付けられたディスクを発見。
"巣"という、金型に溶けたアルミを流し込む時に稀に出来る気泡です。
【SUPER STAR】ディスクの切削加工
焼き入れの後は表面処理を行います。
ここでスポークの上部に拙作が入り、アルミの素材の色が顔を出しました。
ここではピアスボルトの穴、P.C.Dに合わせたナットホールの加工も行います。
これらの工程を経て、塗装に回されます。
スーパースターでは、基本設定のカラーリングだけではなく、『カスタマイズセレクション』というカラーリングのセミオーダーが可能なため、注文に合わせて塗装を行います。
塗装は外部の専門業者に託してますが、ユーザーの希望を実現できるハイレベルな業者と提携しているとのこと。
【SUPER STAR】リム加工
リムは写真のようなアルミの円盤「サークル材」から加工されます。
こちらもサイズに合わせた金型をローラーにセットしスピニングします。 驚いたのは1枚1枚の加工の速さと正確さ。
2分ほどでリムの形を作り、フランジを加工。
ピアスボルトの穴を圧力をかけてくりぬきチェック。
あっという間に真ん中をくり抜き整形、アルマイト加工を経て完成します。
インナーリムも同様に、専用の金型を使用し整形。サークル材からリムへの加工は1日最大で210枚も加工できるとのことです!!
【SUPER STAR】組み付け
【SUPER STAR】鋳造工場の特殊性
ホイールの鋳造工程は危険と隣り合わせです。
炉の中に水分が落ちれば大爆発を起こしかねないため、スーパースターではあらゆる水滴を排する工夫を行なっているとのこと。
これまで大きな事故はないとのことですが、過去に溶けたアルミが靴の上に溢れ落ちたことがある鋳造担当さんは「熱すぎて痛みもわからないほどでした」と言います。
日本国内にアルミホイールのメーカーは数多くありますが、自社内に鋳造設備を持っているメーカーはその中でもごく僅かです。
理由は、人材の確保など様々ありますが、特に鋳造設備を用意するハードルの高さにあります。
水蒸気爆発などの危険がある鋳造設備を街中に新設することはできません。
常に危険と隣り合わせだからこそ、あらゆる安全対策を講じ製品製作に取り組んでいます。
スーパースターの鋳造設備がある柏原事業所は、町から離れた山中にあります。
周囲には葡萄畑が広がる大自然の中に建てられ、以来25年以上『レオンハルト』『ピュアスピリッツ』などを製造し続けています。
「3ピースホイールのメーカーで鋳造設備を持っているのは当社だけだと思います」と株式会社スーパースターの営業部長の神山さんは語ります。
自社でディスクもリムも製造することは大変なことばかりでもなく、部材管理などがやりやすいという利点もあるのだそうです。
「なぜ3ピースホイールは最高級品と呼ばれるのか」
「なぜ3ピースホイールは最高級品と呼ばれるのか」という疑問を深掘りした今回の取材。
作業工程の数、それぞれの工程の複雑さなどを目にすることが出来ました。
ここで改めて1ピース、2ピースにはない利点をご紹介いたします。
カスタマイズ性
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3ピースホイールはディスク、アウターリム、インナーリムと3つのパーツに分かれていることから、それぞれのカラーリングを自由にカスタマイズすることもできます。
スーパースターでは、ディスクでは10パターンのベースから配色を選ぶことが可能。
リムのカラークリアは14色、ペイントタイプは3色、ブラッシュドはタイプは2種、ピアスボルトも4種類から。
一部モデルではピアスボルトもカラークリアorペイントタイプから好みのカラーを選ぶことができ、ディスクとの親和性を高めます!
世界に4本の自分だけのセミオリジナルホイールをオーダーすることも可能です。
リム交換が可能
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アルミホイールであるからにはタイヤを組んでクルマに装着されます。
万が一、使用中にリム部分が損傷した際にリムを交換することでホイールを蘇らせることが可能です。
1ピースはディスクもリムも一体、2ピースではディスクとリムが溶接されていることからリムのみの交換は安易にできません。
しかし、ディスクとリムをピアスボルトで固定した上でシーリングで気密性を確保しているスーパースターの場合、シーリングを剥がし、ピアスボルトを外すことで分解が可能なことから『リム交換』を行なうことができるのです。
ガリってしまっても、リム交換をすれば元どおりにできるのも3ピースだけの特権です。
スーパースターでは新品購入から2年間、通常価格より安く修理ができる『リム・リペアサポート』を展開。
入会金や年会費などがかからず、新品購入から10日以内に申し込めば入会が可能。
申し込みから約2週間で「リム・リペアサポート会員カード」がお手元に届きます。
この会員証があれば、2年の間のリム修理は下記の会員価格が適用されるというサポートは3ピースだからこそ可能です。
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【3ピースホイール】まとめ
今回は株式会社スーパースターさんのご協力の元、3ピースホイールの魅力について取材致しました。
3ピースホイールが「最高級品」である「確かな理由」を知ることができたのではないでしょうか。
機械によるオートメーション化された工場と違い、スーパースターでは『職人』と呼ばれる熟練のスタッフがホイールを1本1本……いえ、部材のひとつひとつに到るまで、厳しい目と確かな腕から生み出していました。
「最高級品」を作るからこそのこだわりを垣間見ることができたと感じます。
3ピースホイールを所有する喜びを感じられる『あなたのクルマにピッタリなホイール』がここにあるかもしれません。