TVR タスカン。この名前にピンと来たあなたは、かなりの自動車マニアです。
21世紀目前に、イギリスの小さなスポーツカーメーカーから発売されたこのクルマは、他のどのクルマとも違う、今見ても前衛的といえるデザインで、見るものを惹き付けます。
TVRってどんなメーカー?
TVRは、1947年にイギリスで創業した自動車メーカーで、小型スポーツカーの生産を得意としていました。
1970年代までは小さなガレージメーカーに過ぎなかったのですが、1981年にピーター・ウィラーという敏腕経営者に買収された後、いくつかのヒットモデルを制作。経営が軌道に乗り始めます。
その後1990年にはグリフィス、1992年にはキミーラといった斬新で有機的なフォルムのモデルが好評価を受け、クルマメーカーとして広く認知されました。
しかし、2004年にロシア人実業家、ニコライ・スモレンスキーによって買収された後は経営が急速に悪化し、経営が破綻してしまいます。
一般的にTVRというメーカーの「全盛期」が、1990年代から2000年代初頭までとされるのはこの為です。
まるでエイリアンの様な個性的スタイル
エイリアンや昆虫を思わせる有機的かつ未来的なシルエットは、1度見たら忘れられない強烈なインパクトを持っています。
ABS非採用!乗り手を選ぶスパルタンな仕様
タスカンにはエアバッグ、ABS、TCSといった運転に関する安全装備が一切搭載されていません。
21世紀目前に販売された車とは思えない硬派な仕様です。
一方でエアコン、パワーウィンドウ、CDプレーヤーといった快適装備が採用されている辺りを考慮すると、小型スポーツカーにおけるピュアな操縦性を重視したいというTVRらしい思想を垣間みることが出来ます。
種類豊富なボディカラー
タスカンと言えば、その独特なマジョーラカラーが印象に残っている人も多いのではないでしょうか。
「カメレオン」という名の、見る角度によって2色に変化するデュポン社製の特殊塗料や、同じくデュポン社製の4色に変化する「カスケード」がそれに値します。
その他にも通常のソリッドカラー、メタリック、パール等、様々な種類のボディカラーを選択することが可能でした。
内装をオーダーすることもでき、カラーやステッチの組み合わせによって自分好みの印象に仕立てる事が出来るのも、大きな特徴です。
“スピード6”という名の自社製エンジンを搭載
搭載されるエンジンはドライサンプ式の直6DOHCで、"Speed6"という名称が与えられています。
ボンネットの構造が独特で、オイル交換や冷却水等の給油、給水は前方のハッチを開けることで行われますが、更にボンネットを取り外すことも可能な二段階構造。
最高出力は360ps/7000rpm、最大トルクは42.9kgm/5250rpmとなっており、1100kgの車重とも相まって強烈な加速性能を発揮します。
まとめ
エンジンまでをも自社生産し、インテリアの隅々に至るまでデザインにも妥協しない姿勢は、小規模なメーカーならでは。
メーカーの世界観が120%表現された、唯一無二のクルマと言えるでしょう。