2019年11月にお披露目されたフェラーリの新型「ローマ」は、滑らかな曲線が美しい、往年のフェラーリを思わせる流麗なスタイリングが印象的な1台です。
ポルトフィーノの流れを汲んだ2+2クーペで、車両のベースは共通であるものの、70%の部品が新設となっています。
50〜60年代を彷彿とさせるシンプルで美しいデザイン
F8トリブートやSF90ストラダーレといったコンペティシブでエッジの立ったモデルが多かった昨今のフェラーリにおいて、ローマは久々に「エレガンス」を全面に押し出したFRフェラーリとなりました。
デザイン面でモチーフとされたのは1950年代のフェラーリ ロードカーで、当時のローマが持つ優雅な空気感を意識したものと言われています。
イタリアにあるフェラーリ スタイリング センターのデザイナーによると、ミニマルなシルエットを活かすために、エアベントや不要な装飾を排除したとの事で、よく見ると、フロントフェンダー脇に、お馴染みのスクーデリア・フェラーリのシールド(エンブレム)がありません。
これは、徹底してクリーンかつピュアなスタイルをめざしたことがよく分かる点ではないでしょうか。
シャークノーズによる優雅なシルエット
また、フェラーリ初のシャークノーズデザインを採用しているのも特徴で、これにより、元よりロングノーズ・ファストバックなスタイルの更にノーズが伸び、優雅なシルエットが強調されました。
先進的なデジタルコックピット
インテリアには、「パッセンジャーセル」と呼ばれるデュアルコクピット構造を継承するコンセプトが導入されています。
これは、安全性に優れたレイアウトであり、各種機能をそれぞれのコックピット内において効果的に配置。
計器類は1枚の16インチHDスクリーン上に収まっており、フルデジタル化されています。
ステアリングホイールには「マルチタッチコントロール」を採用。
運転中でもステアリングホイール上で、様々な操作を行うことが可能です。
伝統のフロントミッドシップエンジン
搭載されるエンジンはポルトフィーノと同様の3.8リッターV8ツインターボエンジンで、4年連続でインターナショナル・エンジン+パワートレイン・オブ・ザ・イヤーを受賞している名作です。
同エンジンに、新しいカムプロフィールの採用やタービンの最大回転数アップ等の改良を施した結果、最高出力は620ps/5750〜7500rpmへと向上。
ガソリン・パティキュレート・フィルター(GPF)を採用し、欧州の厳しい排ガス基準である「ユーロ6D」にも対応しています。
また、組み合わされるトランスミッションは、ポルトフィーノの7段デュアルクラッチから、SF90ストラダーレにも採用された新しい8段デュアルクラッチへと変更されました。
3段階に可変するリアスポイラー
先進技術がてんこもりのローマですが、中でもユニークなのがリアスクリーンと一体化した可変式スポイラーです。
高速走行時に自動でせり上がるタイプのリアスポイラーは、最近のスーパースポーツでは定番となってきましたが、ローマが面白いのは、リヤスポイラーの角度が「ロー・ドラッグ(LD)」「ミディアム・ダウンフォース(MD)」「ハイ・ダウンフォース(HD)」の3パターンに調整される点です。
「HD」ではリヤスクリーンに対して135度の角度となり、約95kgのダウンフォースを発生。300km/h超では「MD」が標準となり、ダウンフォース量が30%、ドラッグ増加は1%未満となり、100km/hまでは自動的にLDポジションを取るというように、速度に対してバリアブルな構造となっています。
エアロダイナミクスを優先すると、ゴテゴテした空力デバイスやダクト等が目立ちがちですが、この可動式リアスポイラーは見事にボディと一体化しており、エレガントに調和しているのが分かります。
まとめ
超弩級のハイパーカーがしのぎを削る中で、エレガンスというフェラーリが持つもう一つの側面に着目したローマ。
久々のFRフェラーリという事もあり、目の肥えたオールドファンにはグッとくるものがあるのではないでしょうか?
優雅さに重きを置いたスタイリングは、イタリアの超老舗メーカーならではと言えるでしょう。