自動車のホイールを車体側に締結する部品として、日本車には当たり前に使用されている「ホイールナット」
近年、日本車でもホイールボルト装着車も増えてきている中、まだまだ日本車ではホイールナットが主流です。
冬が近づけばスタッドレスタイヤに履き替える、雪が溶ければサマータイヤに履き戻す。その際必ずホイールナットを脱着してホイールを交換しているのです。
スタッドレスタイヤに履き替える際、スタッドレスタイヤに装着されているホイールにあったホイールナットをちゃんと選べていますか?
社外アルミホイールを購入した際、ちゃんとホイールの座面にあったホイールナットに交換できていますか?
今回は「ホイールナット」について徹底的に解説してきます!
ホイールナットとは?
ホイールナットはホイールを締結する際、車軸のハブに取り付けられているハブボルトに対して締結するナットで、車種によって本数が異なったり、取り付けるホイールの形状によって異なる形状のナットが存在します。
カスタムする上ではお手軽にカスタムできる入門パーツとして挙げられますが、一歩間違えればホイールが脱落し重大事故にも繋がる重要部品で、安全に車を走行させる上では正しいホイールナットが正しく装着されていることが前提条件となります。
必要なホイールナットの数
車種によってホイールナットの数は異なります。
理由としてはその車両の重量や出力、足回りに掛かる負荷を生産メーカーが幾度のテストを重ねた結果、また量産車としての最適解として、車種によって数が異なるのです。
例えば、車両重量が軽く出力が小さい軽自動車であれば、1輪あたり4つのホイールナット(1車両あたり16本)で締結されています。
逆に多くの荷物を運ぶことが想定され、重量が重くなりがちなハイエースやキャラバンなどの場合、1輪あたり6つのホイールナット(1車両あたり24本)で締結されています。
ホイールナットを購入する際は必ず必要本数を把握した上で購入するようにしましょう。
※盗難防止ロックナットなどは除く(後述)
自動車メーカーによって異なる純正ホイールナットの形状とネジピッチ
ホイールナットは同じように見えて、実は形状(座面)が異なります。
特に製造元の自動車メーカーによってホイールナットの座面が異なり、以下のように大別されます。
またネジ径(M)/ネジピッチ(P)も複数あり、正しいネジピッチのナットを選ぶ必要があります。
トヨタ:平面座/M12×P1.5(ランドクルーザー、グランエース、センチュリー、スープラ、GR86などを除く)
レクサス:平面座/M12×P1.5(LS、LC、LXを除く)
日産:60°テーパー座/M12×P1.25(GT-R、フーガなどを除く)
ホンダ:球面座/M12×P1.5(FK以降シビックタイプR、NC型NSXなどを除く)
スバル:60°テーパー座/M12×P1.25
スズキ:60°テーパー座/M12×P1.25
マツダ:60°テーパー座/M12×P1.5
ダイハツ:60°テーパー座/M12×P1.5
三菱:60°テーパー座/M12×P1.5
※日産車の一部には平面座採用の車種有り
以下のメーカーの一部軽自動車には以下のサイズがあります。
ホンダ:球面座/M10×P1.5
三菱:60°テーパー座/M10×P1.5
スズキ:60°テーパー座/M10×P1.25
ダイハツ:60°テーパー座/M10×P1.25
スバル:60°テーパー座/M10×P1.25
マツダ:60°テーパー座/M10×P1.25
ホイールを付け替える場合、ホイールナットも交換する理由
©︎モタガレ/左がホンダ車用球面ナット、右が60°テーパーナット
前述より、純正状態で装着されているホイールナットには各メーカーによってサイズや形状が異なることが分かりました。
そこで例えば、冬が近づく10月頃、スタッドレスタイヤへ履き替える方が多いのではないでしょうか?
スタッドレスタイヤを履き替える際に、ほとんどの人が純正ホイールとは異なる別のホイールの場合が多いと思います。(純正と同じホイールにスタッドレスタイヤを組んでいる場合は別)
純正ホイールの取り付け座面→スタッドレスタイヤのホイールの取り付け座面が異なる場合、特に平面座のトヨタ、レクサス(一部、日産車)や球面座のホンダの車両の場合は、60°テーパー座のホイールナットを用意しなければなりません。
異なる座面形状のホイールとホイールナットで締結した場合、正しく締結されていないため、最悪の場合はナットやハブボルト、ホイールが壊れ、ホイールが脱落し重大事故を招きます。
©︎モタガレ/ナットホールが小さいホイール
また、純正ホイールナットのサイズも気にする必要があり、21HEX(6角の直径が21mm)のホイールナットを社外ホイールに装着する場合、社外ホイール側のナットホールが21HEXに対応していないと装着できません。
たとえ純正で60°テーパーが採用されているメーカーの車両でも、ナットホールが小さいホイールに対してはホイールナットが装着できないため、社外ホイールに合った19HEXや17HEXのホイールナットが必要になってくるのです。
日本車でも車種によってはホイールナットの内径が異なる
日本車でも高級車やハイパフォーマンスカー、海外向け、海外生産となっていることで、ホイールナットの内径が異なる車種が存在します。
国産車の基本的なホイールナットの内径はM12ですが、欧州車ではM14が広く採用されているため、欧州に合わせてM14サイズが採用されているのです。
トヨタ:ランドクルーザー、グランエース、センチュリー、GRスープラなど
日産:GT-R NISMOなど
ホンダ:FK以降シビックタイプR
レクサス:LC、LX、LSなど
また軽自動車ではM10といったサイズも存在するため、ホイールナットを選ぶ際は注意するようにしましょう。
ホイールナットの形状は様々
ホイールナットには袋ナットと貫通ナットで大別され、傘付き傘なしといった種類にも分けられます。
袋ナット
袋ナットは文字通り、袋がかぶさったような形状のナットで、純正でも多く採用されているホイールナットです。
特にホイールナットが外から見えるデザインを採用しているホイールには袋ナットが採用されています。
メリット:ハブボルトとナットが錆びにくい
デメリット:ハブボルトの長さに対してナット内の長さが上回っていないと正しく締結できない
貫通ナット
貫通ナットは袋ナットとは逆で、締結時にハブボルトが剥き出しになるタイプのナットです。
特にホイールナット部分にカバーがあるデザインのホイールを採用している車種に多いことが挙げられます。
メリット:ハブボルトの長さに依存することなく締結することが可能
デメリット:ハブボルトが剥き出しになるため錆びやすい
傘付きナット
傘付きナットとは、ホイールを取り付けする際、工具を奥まで差し込めないようにホイールを保護するための形状を要しているナットを指します。
傘なしの場合、ホイール締結時にソケットがホイール表面まで到達してしまうため、ホイール表面を傷つける恐れがあります。
傘付きであれば、傘部分でソケットが止まるため、ホイール表面を削る心配が比較的少なく、取り扱いがしやすいナットといえます。
メリット:ホイールを傷付けにくい
デメリット:ソケットサイズが異なる場合が多く、新たにソケットを購入する必要がある。
ホイールナットの長さ違いの意味
ホイールナットは似たような形状をしているものの、長さが短いもの(20〜30mm程度)から長いもの(50mm前後)まで様々な長さのホイールナットが存在します。
ホイールを締結する、という役目を果たす上では締結に必要な長さがあれば十分なので、短いホイールナットでも十分ですが、ホイールの脱着頻度が多い場合やナットホールが深いデザインのホイールの場合は、長いホイールナットが便利になります。
ホイールを装着する手順として、ホイールナットをハブボルトに対して最初は手回しでネジ山に掛けていきますが、短いホイールナットの場合、ナットホールが深いホイールだと手回しでは入れにくく、別でソケットを用意して手回ししていく必要があります。
長いホイールナットの場合、ソケットを使用することなく、そのまま手回しで奥まで締めることができるので、ホイール脱着頻度が多い場合はある程度長いホイールナットがおすすめです。
しかし長ければ長いほど良いわけではなく、ホイールナットが長すぎると今度はボディからナットがはみ出してしまい、車検に通らないケースもあるため、適度な長さのホイールナットを選ぶことが大事と言えます。
盗難防止に役立つロックナット
ホイールは純正、社外問わず費用の掛かるパーツで、盗難されるケースがあります。
盗難を防止する上で有益となるのが、いわゆる「ロックナット」と呼ばれるもので、1輪のホイールに対して1本または全てのホイールナットを通常の6角形状ではない形状のホイールナットを指します。
ロックナットを使用する場合、脱着にロックナット専用のソケット(アダプター)が必要となるため、盗難されるリスクを低減させます。
国産車ではディーラーオプションとしてロックナットセットがラインナップされていることがありますが、アメリカ車とドイツ車では純正状態でロックナットの装着が義務化されているんです。
ロックナットは盗難防止に役立つものの、唯一のデメリットとしてアダプタが無いとホイールの脱着が行えない、ということ。
例えば、スタッドレスタイヤへの交換を行うために自動車工場に行ったものの、ロックナットを忘れた、といった場合は外すことができません。
盗難防止に役立つ反面、ロックナットのアダプタを絶対に無くさず、ホイール脱着の際には必ず持って来られるよう自身で管理する必要があります。
素材が異なるホイールナット
各素材によってメリット・デメリットがあるため、ホイールナットを社外品に交換する場合は用途にあった素材を選ぶようにしましょう。
スチール
ホイールナットに使われる材質で最もポピュラーなのがスチールで、純正ナットのほぼ全てがスチールナットを採用しています。
メリット:価格が安価かつ耐久性が高い。インパクトレンチにも対応。スチールホイールもに使用可能。(約 100円/本)
デメリット:重い。錆びやすい。(基本的に耐食処理はされている)
アルミ(ジュラルミン)
アルミ(ジュラルミン)素材のホイールナットは、デザイン性に富んだ製品が多く、ドレスアップするにはちょうどいいアイテムと言えます。
しかし取り扱いし難いことが難点で、耐久性や普段使いを考えるとオススメはできません。
メリット:カラーバリエーションが豊富。形状が豊富。ドレスアップに最適
デメリット:柔らかい。耐久性が低い。緩みやすいため日常的に増し締め確認が必要。インパクトレンチ使用不可。スチールホイール使用不可。熱膨張率が高く、熱を持つと緩みやすい。
クロモリ(クロームモリブデン)
クロモリ素材のホイールナットはスチールやアルミと比べて割高になるものの、スチールに比べて軽量ながらスチールに近い強度を持っており、レーシングカーに多く採用されている素材です。
メリット:軽量で強度が高い。長さの種類が豊富にある
デメリット:導入コストが高い。(約 500円/本)
低炭素鋼
近年使用される製品も増えてきた低炭素鋼素材のホイールナット。
見た目はクロモリナットとほぼ同じで、スチールとクロモリとの間くらいの強度となり、アルミホイール専用ナットとなるものの、インパクトレンチにも対応しておりコストパフォーマンスに優れる素材です。
※スチールホイールには使用不可
メリット:軽量である程度の強度を要し、コスパに優れる。(約 200円/本)
デメリット:スチールホイールには使えない。ブレーキダストがナット表面に付着していると、ソケットで外す際にソケットと固着しやすい。
チタン合金
ホイールナットに限らず航空機向けやレーシングカーなどのボルトやナットに使われる素材として挙げられるのがチタン合金。
コストは最も高額になるものの、軽量でありながら高強度で腐植性が高く、素材としては優れている部類になります。
熱処理を加えることで変色する「チタングラデーション」もチタン合金ならではの特色と言えます。
メリット:軽量かつ高強度。グラデーションが綺麗
デメリット:とにかく高額。(約 4,000円/本)
まとめ
カスタムをする上でホイールナットはドレスアップの初歩、という側面もありつつ、非常に重要な部品です。
また日本という四季がハッキリしている気候では、スタッドレスタイヤが欠かせず、最低でも年2回はホイール脱着が必要になる地域もあり、正しいホイールナットを選ぶ必要があります。
自動車工場のプロに交換を任せるパターンもあれば、ご自身でホイール脱着を行う場合もあるかと思いますが、必ず正しいホイールナットを選んで、正しい取り付け、適切なトルク管理を行なって、安全なカーライフをお過ごしできればと存じます。