一般的には2〜3年と言われる自動車のバッテリー交換サイクルですが、実際にはそれより早く交換が必要になったり、それ以上使えるケースもあってケースバイケースです。寿命を左右する要素や、劣化のサインなどバッテリー状態を把握し、長持ちさせるのに有効な方法も紹介します。
EVだろうと車に不可欠なのが、電装品やシステム用の12V(24V)バッテリー
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最近はハイブリッド車やBEV(バッテリーだけで走る電気自動車)の走行用バッテリーや、それ以外でもエンジンの負担を減らして燃費を改善する、車内の電装品用バッテリーを持っている車種も多く、「バッテリー」と言うだけでは、どれの事だかわかりません。
この記事で言う「バッテリー」とは、昔ながらの車ではエンジンを始動し、エンジンで発電した電気をエンジンのスパークプラグなど点火系に安定して送る役割、最近の車ではそれに加え、車のシステム全般を起動する役割を持つ、「補機バッテリー」を意味します。
より簡単に言えば、カー用品店やホームセンターで普通に売っている、ガソリン車用なら12V、ディーゼル車用なら24Vの四角いバッテリーですね。
この補機バッテリーは、エンジンをかけずに発進するクルマでもシステムのために搭載されており、走行用のバッテリーとは電圧も異なる全く別系統の電源ですから、たとえハイブリッドカーやBEVであろうと、クルマには不可欠なのです。
むしろ、昔のクルマならエンジンさえかかってしまえば、オルタネーター(発電機)からの電気である程度動かせますが、タイヤがついて運転できる家電、あるいはコンピューターと化している、新しいクルマほど補機バッテリーが欠かせなくなっています。
一般的に言われる「2~3年で交換」の妥当性は?
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さて、前項で解説した12V(24V)バッテリーですが、一応の目安として「2~3年で交換」とされてはいますが、実際にはクルマの種類や使用方法によって、だいぶ幅が出てきます。
以下でザックリと紹介しましょう。
昔ながらのガソリン/ディーゼルエンジン車は2~5年
エンジンを始動してモーターなど使わず走り、アイドリングストップもない昔ながらのクルマでは、おおむね2〜5年とされています。
悪天候の夜間にエンジンをかけてライトもワイパーもエアコンも使い、オーディオすら作動させる環境で、歩いても行けるような近くのコンビニへ往復するような環境ではエンジンの発電機で充電する間もなく、普段から充電不足でバッテリーの負担が大きくなりがちです。
そのような使用方法で、なおかつ気温が高すぎても低すぎてもバッテリー内の電解液が劣化しやすいため、バッテリーの寿命は短いと思って、わりと早めにバッテリー状態を確認する必要があります。
アイドリングストップ車は2~3年
次にアイドリングストップ車ですが、これも前項の使用条件だと寿命に厳しいのに加え、信号や渋滞で停止のたびにエンジン停止/再始動を繰りかえすため、さらにバッテリーへの負担は大きく、交換時期は早めの傾向です。
しかもバッテリーはアイドリングストップ車専用品で高価なうえ、メーカーの保証期間も1年半程度と、かなり短め。
それだけが理由ではありませんが、最近はアイドリングストップ機能をあえて搭載しないエンジン車も出てきています
ハイブリッド車、PHEV、BEVといった次世代車は3~5年
最後にバッテリーからの電気で走るモーターをエンジンと併用するハイブリッド車と、外部からバッテリーに充電した電気だけでモーターにより走るBEV(電気自動車)、両方の組み合わせで外部からの充電も可能な、PHEV(プラグインハイブリッド)について。
これらはハイブリッド車やPHEVでも、走行用バッテリーでモーターを回してエンジンを始動するため、補機バッテリーの役割はほとんどがシステム(コンピューター)の起動と動作のみに限られ、負担が少ないために、もっとも寿命は長いです。
ただし、これらの次世代車はバッテリーも特殊で高価な専用品が必要で、交換時の負担はもっとも重くなります。
実際の寿命はどうやって確かめる?
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バッテリーの寿命を直接確かめる簡単な方法は、日々のクルマの様子を見るのが1番です。
一応、バッテリーに数か所設けられたフタを開いて液の変色を確かめたり、検電テスターで電圧を計測するなど直接確認する方法もあります。
しかし、慣れないDIYをむやみにやるより、下記の前兆が現れたらすぐディーラーや整備工場に点検してもらうか、走行不能レベルの前兆が出た場合は、路上で立ち往生する前に安全な場所へ止め、ロードサービスなどを呼びましょう。
始動時にセルモーター音が弱い
モーターで走り出すフルハイブリッド車やPHEV、そもそもエンジンをかけないBEV、発電機兼アシストモーターで始動するマイルドハイブリッド車を除き、エンジンをセルモーターで始動するクルマではバッテリーが弱ると、セルモーターの音がいつもより弱くなります。
夜間にヘッドライトが暗い、雨の日にワイパーの速度が遅い
他の理由も考えられますが、これらもバッテリーが弱っている可能性があります。
特にワイパーの速度が普段と比べて明らかに遅い場合、バッテリーか発電機の寿命で、バッテリーの電気が尽きかけていると考えて、適当な場所で止めて救援を待つべきです。
ウィンカーの速度が遅かったり点灯しない
バッテリーが限界まで弱ると、ウィンカーを上げても緩慢にしか点滅しなかったり、点滅しない、点灯すらしないようになりますが、これも電力不足でエンストして走行不能になる前兆なので、適当な場所に止めて救援を呼びましょう。
アイドリングストップ機能が使用できない
アイドリングストップ車の場合、バッテリーが弱くなったのを検知すると、再始動に失敗して立ち往生するのを防ぐため、アイドリングストップ機能が無効になる場合があります。
使い方やクルマの状態次第で早くなるバッテリーの消耗と改善策
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以下のような使い方ではバッテリーの消耗が早くなるので、改善策と合わせて紹介します。
エンジン始動後に片道5~10分程度の短距離走行を日々繰り返し、エンジンの発電による充電をする時間がない。
真夏にエアコンをかけたままオーディオなど車内の電装品もフルに使い、エンジンによる充電が追いつかない。
夜間、ワイパーを使う悪天候といった悪条件も拍車をかけるため、場合によっては車を止めて、道路状況や天候の回復を待つのもひとつの選択です。
劣化を防ぐバッテリーメンテナンス、特に乗らない場合はパルス充電器での定期的な充電が有効
弱ったバッテリーが簡単に上がるのを防止するには、車から外して家庭用電源から直接充電したり、バッテリー液を補充するという方法もありますが、根本的にバッテリー性能を復活させられるわけではありません。
そこで最新のオススメが「パルス充電器」です。
バッテリー内部では、経年劣化で生成される「サルフェーション」という不純物がバッテリー性能や蓄電性能を著しく低下させる原因となっています(端子やバッテリー内に目で見える結晶とは別)。
このサルフェーションを1秒間に1,000回など、短期間に電圧を周期的にかけ、サルフェーションを除去しながら充電するのがパルス充電器です。
5年以上など長期間の使用で経年劣化、あるいは長期間乗らない車で、放置したまま劣化を待つばかりのバッテリーのサルフェーションを除去し、寿命を伸ばす効果が期待できます。
より詳しく説明した記事はこちら
新しい車ほど、バッテリー交換は自分でやらない方がオススメ
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バッテリーが弱ったり、すっかり上がった場合、昔の車ならカー用品店やホームセンターで買ってきたバッテリーに交換するだけで、せいぜい電源がない間にリセットされた時計を修正する程度で済みました。
しかし現在の車、具体的には2000年あたりから、それ以降の車では、新しい車ほどバッテリーを外した時の問題が増えます。
・元に戻した時にセキュリティが作動して止め方がわからない。
・あらゆる場所に配置されたコンピューターやメモリーがリセットされて初期値に戻り、パワーウィンドウなどの電装品が正常に作動しない。
・新しいバッテリーを取り付けた後、自己診断装置が作動している間に車を動かすと、トラブルと原因になる可能性がある。
これらに対処するためには、車に備え付けられた分厚い取扱説明書を読んで、バッテリー交換後に必要な設定などを全て把握しておく必要があるものの、車が新しくなるほど原状復帰が面倒になっています。
対策として、バッテリーを外しても電源供給を続けられる「パックアップ電源」を用意する手段もありますが、DIYとしては本格的すぎるでしょう。
特にここ数年の間に発売された新しい車や、次世代車と呼ばれるフルハイブリッド車、PHEV、BEVなどは、ディーラーや整備工場でバッテリー交換を頼むのが無難です。
そうした業者では格安バッテリーなど扱っていませんし、工賃もかかりますが、それを嫌って通販で購入した格安バッテリーを自分で交換し、トラブルになるよりは時間もお金も無駄になりません。