現在のマツダのフラッグシップモデル『アテンザ』が登場する前、先代にあたるモデルとして販売されていたのが『カペラ』です。
一時期セダンはクロノスが後継とされた時代もあったものの復活し、結局7代、32年間にわたって販売されたカペラの初代モデルは『風のカペラ』と呼ばれた優雅なセダン/クーペでした。
そして一般的な印象とは異なり、レースでサバンナ以前に初代スカイラインGT-Rを破った車でもあります。
ファミリアとルーチェの中間に登場したミドルクラスセダン/クーペ
初代カペラは1970年5月、大衆車ファミリア(1963年初代発売)と高級車ルーチェ(1966年初代発売)の中間を埋める、ミドルクラスの4ドアセダン/2ドアクーペとして発売されました。
そして後にファミリアとカペラの間に、さらにサバンナ/グランドファミリアが追加されたとはいえ、現在のマツダにおけるフラッグシップモデル、アテンザに続く系譜はミドルクラスだったというあたりに当時と現在のマツダの違いが現れています。
また、当時既にロータリーエンジンは、コスモスポーツ/ファミリア/ルーチェロータリークーペに搭載されていましたが、企画段階から既にロータリーエンジンが存在し『最初からロータリーエンジン搭載を前提で作られた車』としては初代カペラが初でした。
そんな1970年とは『ジャンボジェット』と呼ばれた巨人旅客機ボーイング747が就航したばかりで世界中の話題となっており、『風のカペラ』というキャッチコピーでデビューしたカペラも早速便乗し、『ジャンボが飛ぶ、カペラが走る』と、広告のキャッチコピーに利用します。
そしてもちろん、カペラには飛ぶように走る至高のパワーユニットが搭載されていました。
エンジンは新型の12Aとレシプロ4発1.6リッターでスタート
初代カペラの発売当時、マツダはファミリアが1~1.2リッタークラス&10Aロータリー、ルーチェが1.5~1.8リッタークラス、短命に終わったルーチェロータリークーペが13Aロータリーというラインナップでした。
そして中間を受け持つカペラには、レシプロ直列4気筒エンジン版がルーチェ用1.5リッターエンジンを拡大した1.6リッターと、後に廉価版1.5リッター、上級版1.8リッターを追加。
しかし本命はもちろんロータリーで、初代カペラがデビューとなった12Aロータリーがスタンバイ。
もちろんファミリア用の10Aより排気量を拡大した、パワーアップ版です。
また、ファミリアより一回り大きいボディと広々としたキャビンで車内の快適性に優れているだけでなく、ライバルを圧倒するパワーを持ったカペラロータリーはセダン/クーペともに人気モデルに!!
後に12Aはルーチェやサバンナにも搭載されましたが、ルーチェより軽快でサバンナより快適というミドルクラスらしいポジションは確保し続けました。
サバンナを待たず初代スカイラインGT-Rを撃墜!
一般的に広く知れ渡っている話として、「レースで連勝を続けていたスカイラインGT-Rの記録をサバンナが止めた」とされており、それ以前のファミリアはトレッド不足でのコーナリングで、カペラはボディが大きすぎて勝てなかった、と言われます。
しかし実際にはサバンナ発売(1971年9月)以前、既に初代カペラは2度にわたり初代スカイラインGT-Rの勝利を『阻止』していました。
まず1971年7月25日の富士1000kmレースで寺田 陽次郎/岡本 安弘組のカペラロータリークーペは総合3位、T3クラス優勝、スカイラインGT-R(総合6位、T3クラス2位)を抑えます(総合優勝はポルシェ910)。
さらに同年8月15日の富士500kmレースでは、またも寺田 陽次郎のカペラロータリークーペが多数のスカイラインGT-R軍団の追撃を振り切って総合優勝(スカイラインGT-Rは2~4位、6位など)。
1972年5月3日の日本グランプリを待つまでも無く、メジャーレースでスカイラインGT-Rを下していたのです。
その後もサバンナが熟成されるまでカペラの参戦は続き、スカイラインGT-Rのみならずサバンナを下して優勝した事すらありました(1972年10月10日の富士マスターズ250kmレース)。
これらの公式記録により、連戦連勝ともなるとサバンナを待たねばならなかったとはいえ、初代カペラ ロータリークーペでも既にスカイラインGT-Rと拮抗する戦闘力を持っていたという証明になっています。
主なスペック
マツダ S122A カペラ ロータリークーペ 1970年式
全長×全幅×全高(mm):4,150×1,580×1,395
ホイールベース(mm):2,470
車両重量(kg):960
エンジン仕様・型式:12A 水冷2ローター
総排気量(cc):573×2
最高出力:88kw(120ps)/6,500rpm(※グロス値)
最大トルク:162N・m(16.5kgm)/3,500rpm(※同上)
トランスミッション:5MT
駆動方式:FR
まとめ
レースでの活躍もあり、順調なスタートを切った初代カペラは、サバンナ/グランドファミリアが1代限りで消えても生き残るマツダ主力車種の1台へと成長しました。
後にロータリーエンジンを失ってからは、ある意味『普通の車』へ変わっていきますが、初代カペラはレースにおけるマツダロータリー軍団vsGT-Rを語る上で、今でも欠かせない存在です。
ただしファミリアとサバンナの中間期に奮闘したためか、目立つ形で紹介される事が少ない事が少々惜しまれます。