クルマのドレスアップで定番な「ホイール交換」や「ローダウン」ですが、予算に余裕があれば両方一度にやってしまうのもアリなものの、どちらもお金がかかりますし、無理に一度にやろうと安物狙いをするより、高価なもので段階を踏んだ方がカッコよくなります。
ならばどっちを先にやった方がいいのか…今回は「車高を下げるローダウンとホイール交換、どっちを先にやるべき?」を解説しましょう。
結論から言ってしまえば、「車高を下げるのが先」!
車高が先か、ホイールが先かについては諸説ありますし、中には「今のクルマは昔と違い、純正でそんなにタイヤとフェンダーの隙間がないから、無理に車高を下げずホイール交換だけでカッコよさを狙ってもいい」という意見もあり、これは一理あります。
しかしドレスアップとはいわば個性の見せどころ、妥協したカッコよさよりギリギリまでツメたカッコよさの方が断然キマりますし、ドレスアップ内容の説明にも熱が入って、話が盛り上がるわけです。
ならば車高もビシッとキメる必要が出てきますが、どちらが先かといえば断然、「車高が先」。
なぜかというと、ホイールを先に交換してしまうと見た目のバランスが純正から崩れ、かえってフェンダーとタイヤがスカスカになったような錯覚すら感じる場合もありますし、そこから車高を下げると、思ったよりツライチにならず、それどころか引っ込む?
もちろんホイールスペーサーなどで修正は可能ですが、無駄な出費が生じるうえに本来履けたホイールを買わなかった、という結論になってしまう場合もありますから、車高を先に下げて、それを基準にホイール選びをした方がいいわけです。
次はそうなる理由を説明していきます。
もし先にホイールだけ変えると…あれ、なんか腰高?
仮に、先にホイールだけインチアップしてみたとしましょう。
今のクルマは純正状態でスタイリングのバランスが取れており、そこからインチアップするとタイヤのゴム部分が薄くなり、相対的にフェンダーとタイヤの間が広がり、スカスカになったような錯覚に陥ります。
さらに一歩引いてみれば、フェンダーとタイヤがスカスカに見える分だけ、車高が上がったようにすら見えて、もうそうなるとバランスもへったくれもありません。
むか~しのクルマ、特に国産車はタイヤチェーンをつけるスペースを取るため、たとえスポーツカーであろうとフェンダーとタイヤの隙間を広く取っており、現在の視点からすると妙に腰高に見えますが、そんな感じでスタイリングが退化するんです。
もちろん、車高調も同時に買って車高を下げればよいのですが、この場合は「どちらが先か」という話なので、いずれか片方を選ぶなら、最初にホイールを変えてしまうと、車高を下げるまで妙にフェンダーとタイヤの間がスカスカで腰高なクルマにしばらく乗らねばなりません。
車高を下げればキャンバーが変わり、ホイールは引っ込む
ならばやはり、車高を先に下げましょう。
これはあくまで、四輪独立懸架の足回りを持つクルマに限った話ですが、一般的に車高を下げると「ネガティブキャンバー」、通称「ハの字」と呼ばれる、下に行くほどタイヤが広がるように角度がついた状態になります。
つまり角度がついただけ上は引っ込んでしまいますから、そこからツライチになるようなサイズやデザインのホイールを選んだ方が、話が早いわけです。
もちろん、「どちらが先か」で車高を下げた場合の話ですから、最初はちょっとホイールが奥に引っ込んだスタイリングでガマンすることになりますが、スカスカの腰高スタイルよりははるかにカッコがつくので、お金がたまるまでの期間、屈辱に耐えずとも済みます。
なお、軽自動車やコンパクトカー、あるいは一昔前だと大型ミニバンのアルファード/ヴェルファイアさえ採用していた「トーションビーム式」や、それらの4WD車によくある「3リンクリジッド」などの足回りだと、結果は同じですが少し話は変わります。
トーションビーム式、ホンダだと「車軸式」だったり、メーカーによって呼び方が変わってきますが、独立懸架ではない足回りだと理屈上はキャンバーが付きませんが、純正状態でトー角やキャンバー角がついている場合、車高を下げた(車軸とボディが近づく)分で少なからずキャンバー変化が起きます。
3リンク式など、「ラテラルロッド」と呼ばれる斜めのアームで後輪の車軸を吊っている場合は、車高が変わると車軸自体が左右にズレますが、これもラテラルロッドの長さを変えたり調整式に交換するなどして、結果はトーションビームと同じです。
タイヤにキャンバーはつかないとはいえ、「フェンダーに対しタイヤがどのくらい引っ込んでいるか」は、車高を下げてからの方が正確に把握できますから、やはりホイールより車高を下げる方が先となります。
なお、なるべくツライチにしてカッコよくするには車高の微調整を繰り返しますから、ローダウンサスより車高調で車高を下げた方が最終的に効率がいいです。
車検対策に、キャンバー調整と適切なインセット選択をしよう
なお、思いっきりキャンバーをつけてツライチにセットできるホイールを装着したドレスアップもありますが、「はみ出しタイヤによる車検不適合」には注意しましょう。
2023年12月現在の保安基準では、はみ出しタイヤに関わる保安基準は以下のように定められています。
ちょっと難しい表現ですが、要するにキャンバーをつけてフェンダーより10mm未満の突出が認められるのはタイヤだけで、ホイールやホイールナット/ボルトの頭がハミ出すのはダメ、ということです。専ら乗用の用に供する自動車であって、車軸中心を通る鉛直面と車軸中心を通りそれぞれ前方30度、及び後方50度に交わる2平面によりはさまれる範囲の最外側がタイヤとなる部分については、外側方向への突出量が10mm未満の場合には「外側方向に突出していないもの」とみなす。
そもそもオフロード用タイヤなどのサイドウォール文字(出っ張り)を認めるための規則で、キャンバーつけてハミ出させるためではないので、車検適合のため実際には車高調のアッパー(頭)部分の調整で、車高を下げただけついたキャンバーを起こします。
それでもなるべくキャンバーはつけて、ツライチにして、車検は通して…とバランスを取るためにも、キャンバー調整まで可能な車高調と、はみ出しタイヤにならないインセットのホイール選択が肝心、ということになりますね。
いずれにせよ、車高を下げてからでないと調整もホイール選択もままなりませんから、車検適合を狙う意味でも、「車高を下げるのが先で正解」というわけです。