86/BRZのようなスポーツカーにとって、コーナリング性能の向上はもちろん、スタイリッシュなローフォルムを実現するためにも必要不可欠なアイテムである車高調整式サスペンションキット(以下、車高調)。
しかし、車高を下げているということはサスペンションのショックアブソーバーが底付きを起こしやすくなってしまうという弱点があります。
そこでオススメなのがTEINの車高調『FLEX A』と『EDFC ACTIVE PRO』。
実際にTEINのデモカーを試乗し、そのパフォーマンスの実力を体感してきました!
Text : Koichi KOBUNA
Photo : Takanori ARIMA
TEINは乗り心地にこだわる!!
愛車をカッコよくカスタムするのであれば、まずはローダウンさせたい!という人も多いのではないでしょうか。
しかし、車高を下げるということは、その分サスペンションのストローク量が短くなるということ、つまりは乗り心地の悪化や、ショックアブソーバーの底付きを起こしやすくなってしまいます。
一般的にショックアブソーバーが底付きを起こすと最悪、即破損にもつながってしまうため、バンプラバーと呼ばれるものを用いて底付きが起こらないようになっているのですが、バンプラバーはゴムやウレタンでできているため、大きなショックを乗員に伝えてしまうのです。
さらに突き上げのショックだけでなく、跳ね返りも起こるため、高速域ではクルマの挙動を乱す原因ともなってしまいます。
これが車高を落とすと乗り心地が悪くなる、というイメージの一端を担うのですが、サスペンションメーカーの老舗であるTEINがリリースする「FLEX A」は、ハイドロ・バンプ・ストッパー(以下H.B.S.)を採用し、この突き上げと反発を抑え込むように作られているのです。
ラリーシーンでの技術を応用
©STARD TEIN
ラリー競技のワンシーンで、車両が大きくジャンプしている姿をみたことがある人も多いのではないでしょうか。
あそこまで大きなジャンプをしたにもかかわらず、着地の後に大きな挙動変化も起こさずにそのまま走り続けられるのも、H.B.S.の技術が採用されているからなのです。
どんな仕組みなのかというと、ショックアブソーバー内に作動バルブが組み込まれており、通常の減衰力を発生するのですが、決まった位置を超えてサスペンションがストロークすると、作動バルブが押し下げられてH.B.S.が作動。
ポートを狭めてオイルを流れにくくすることで、フルバンプ付近でのみ高い減衰力を生み出すというもの。
つまり、底付きする直前でショックアブソーバーの減衰力を高め、ショックを吸収することで底付きやバンプラバーへの接触を防ぎ、突き上げや挙動変化を抑えるというわけなんですね。
もちろん、FLEX Aも全長調整式の車高調整機構や16段の減衰力調整機能も持ち合わせており、ストリートユース向けの車高調ながらも、ワインディングからミニサーキット程度ならカバーしてくれる懐の広さも魅力です。
EDFC ACTIVE PROでさらにきめ細かなセッティングが可能
今回のTEINのデモカーには、FLEX Aのほか、電動減衰力コントローラ『EDFC ACTIVE PRO』も装着されていました。
こちらは、走行中、常に乗り心地(減衰力)を自動調整してくれるという優れもの。
通常、車高調の減衰力を調整するにはショックアブソーバーに備わる調整ダイヤルを操作しなければなりませんが、EDFC ACTIVE PROはその調整をモーターで行い、車内にいながら減衰力を替えることができるというものです。
任意の数値に減衰力を変更できるモードのほか、速度、加減速G、旋回Gを感知してリアルタイムに減衰力を調整してくれる機能も備わっているので、加速時はリアの減衰を低くしてトラクションをかけるとか、コーナリング中にだけ減衰力を高めてロールスピードを抑えるというようなことも自由自在。
これはスポーツ走行時はもちろん、日常のドライブでも有効なシステムと言えるでしょう。
また、ワンタッチで基準の減衰力を変更できる機能も持ち合わせているので、例えばリアシートのシートベルトを装着したときはリアの減衰力を変更するとか、ドリフトのきっかけにサイドブレーキを引いたときだけ減衰力を変更するといった使い方もできるので、拡張性は無限大なのです。
そして装着も複雑な配線の処理を不要としたワイヤレスコントロールを採用しているので、取り付けの手間を大幅に簡略化した点も見逃せません。
スポーツカーというと乗り心地が悪いイメージがあるかもしれませんが、FLEX AとEDFC ACTIVE PROを組み合わせれば、普段の乗り心地も確保しながらスポーツ走行もこなすという相反する部分が両立できてしまいます。
もちろん86だけでなく、ミニバン系などにも使えるアイテムということもお伝えしておきましょう。
実際に乗ってみて
それでは最後に実際に乗ってみた感想をお伝えします。
もともと86後期の純正サスペンションは前期型に比べれば改良されたものの、荒れた路面ではゴツゴツ感の強いもの。
リアのスタビリティとトラクション性能は向上しているので、よい部分は消さずに悪い部分だけが消せればベスト、という感じです。
まず低速域では純正のゴツゴツとする鋭い突き上げ感は減少し(ノーマルよりは固い印象はあるものの)、しなやかな印象。
これは基準値の減衰力を低めにしてよく動く足にしているからでしょう。
そこから速度を上げていくとEDFC ACTIVE PROが自動的に減衰力を高め、しっかりした乗り味に。道路の継ぎ目など入力の大きなところでも、基準値の減衰力ではフワついた挙動を見せるシーンですが、速度が乗っていることで減衰力が高く制御されているため一発で揺れが収まります。
ここはFLEX AのH.B.S.も効いているのかもしれません。
コーナリングでは左右の減衰力を横Gを検知し、絶えず減衰力を変更。
ロールスピードを抑えながらも、加減速Gも検知して前後方向の減衰力も変更するというEDFC ACTIVE PROならではの3次元的制御で安定したトラクション性能も確保。
EDFC ACTIVE PROはモーターによる細かい制御によって通常16段調整の減衰力を最大64段刻みで調整できるため、人間では到底不可能な制御をしてくれるというわけなんです。
短い間の試乗でしたが、乗り心地とコーナリング&トラクション性能の向上という共存することが難しい部分をリアルタイムに減衰力を変更することで実現したEDFC ACTIVE PROには驚いた、というのが正直なところ。
これは言葉で説明するよりも一度乗ってもらった方が早いかもしれません。
TEINが参加するイベントで装着車をデモカーとして乗れる機会を設けている事もあるとのことなので、気になる方はTEINのSNSなどをチェックしてみてはいかがでしょうか。