いま日本では、さまざまなアジアンタイヤが流通し、「ただ安いだけ」というイメージは薄れつつあります。
そんな中、ドリフト界から始まり、今ではストリートの世界でも注目を集めているのが台湾のタイヤメーカー「フェデラルタイヤ」です。
フェデラルタイヤとは、いったい何者なのでしょうか。
Text : Shingo MASUDA / Photo : Takanori ARIMA
実は日本と関りの深い老舗メーカー
歴史で言えば、日本の老舗バイクメーカーであるヤマハ発動機(1955年創業)とほぼ同じです。
しかし、そんなフェデラルタイヤが正式に日本へ輸入されたのは2002年(平成14年)のため、日本人にあまりなじみがないのは仕方がないかもしれません。
しかしフェデラルタイヤは、日本のタイヤメーカーと非常に深い繋がりを持っているのです。
フェデラルタイヤと日本のタイヤメーカーとのつながりは、ヨコハマタイヤの代理店をしていたことに始まります。
やがて、販売代理店からタイヤメーカーとなる過程で、ブリヂストン(1960年~1979年)、ダンロップ(1981年~2000年)のノックダウン生産を開始。
メーカーとして欠かすことのできない技術を手に入れ、今では大手メーカーにひけを取らない高品質のタイヤを製造し、徐々に知名度を上げています。
日本生まれのモータースポーツ「ドリフト」に全面協力
日本でフェデラルタイヤの存在をよく知っているのは、ドリフト界のドライバーたちです。
2019年までは、土屋圭市氏が主宰するドリフトキングダム(2020年D-1へ統合予定)でのスカラシップ協力(一部タイヤの無償提供)を行っており、過去には、今ではすっかり日本を代表するカテゴリーとなったD-1グランプリやフォーミュラーDなどの公式スポンサーを務めた実績もあります。
そのため、「フェデラル=ドリフト」というイメージを持っている方も多いのです。
では、日本や欧州の大手メーカーに比べて認知度が決して高くないにも関わらず、ややニッチなカテゴリーであるドリフトに、なぜ協力したのでしょうか。
その理由を、フェデラルジャパン代表の小松社長に聞いてみたところ、危険運転を減らしたいからという意外な答えが返ってきたのです。
もともと、モータースポーツが大好きな小松社長は、安全が確保されたサーキットで行われるイベントにタイヤメーカーとして協力することで、一般ドライバーがサーキットデビューするハードルを下げ、公道ではなくサーキットでモータースポーツを楽しんでもらいたいという思いがあったそうです。
ドリフトへの参戦がコスパに優れたフェデラルタイヤを作った
ドリフトは、4輪を滑らせながらギリギリで車をコントロールする技術を競う競技で、時には200km/h近いスピードでコーナーに侵入していくこともあります。
そのため、タイヤには全方向に高い負荷が掛かり、摩擦によるタイヤの熱も相当なものとなります。
そんな過酷な状況でも、ドリフトに使用されるタイヤには、高い走行性能と耐久性が要求されるのです。
そして、本来の目的である危険運転を減らし、サーキットに来てもらうという目標を達成するためには、一般ドライバーにも購入しやすい手ごろな価格でなければなりません。
そんな高い性能と手ごろな価格という、相反するものを追い求めた結果、安くても高性能な現在のフェデラルタイヤが生まれたのです。
求める理想を求められる価格でどうやって実現するか
「国産メーカーの半額で9割の性能」この言葉は、フェデラルタイヤが常に目指している目標ですが、“9割の性能”と聞くと、やや消極的ともとれるかもしれません。
しかし、それは見方を変えると、絶対的な性能は高く保ちつつ、価格という市場のニーズにマッチさせるという非常に合理的な考え方とも言えます。
絶対的な性能とは、車に求められる「走る・曲がる・止まる」という基本的な性能を100%発揮させるという意味です。
つまり、一部の特殊なタイヤを除き、公道を走る車に装着されるタイヤの性能は十分確保されるということです。
さらに、タイヤの耐久性を示す基準である摩耗係数を、アメリカの基準である200よりも高い300に設定し、減りにくくすることで、タイヤ本来のライフサイクルを長くしています。
いくら高性能な高級タイヤであっても、価格がネックとなって、溝がなくなる限界まで使われてしまうようでは、本来の性能と安全は期待できません。
理想とする性能のタイヤを、いかに売りたい価格で作り、ユーザーに届けるのか。
そんな高い理念を持ったフェデラルタイヤの未来に対し、大きな期待を持ってしまうのは、決して筆者だけではないはずです。
メーカー情報
フェデラルタイヤジャパン
公式サイト:http://federaljapan.com/