R32型のスカイラインGT-Rに搭載する為に開発された名エンジン『RB26』。
そんなRB26がGT-R以外に、唯一搭載されたモデルが存在します。
しかも、搭載されたのはクーペやセダンなどスポーツ系ボディではなく、快適性を重視したステーションワゴンでした。
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RB26が搭載された唯一のワゴン車
国内ツーリングカーレースで、圧倒的な速さを誇ったスカイラインGT-R。
特に"羊の皮を被った狼"伝説を継承した初代は、未だに語り継がれる名車です。
そんなスカイラインGT-RのBNR32型(1989年-1994年)から4代目BCNR33型(1995年-1998年)、5代目BNR34型(1999年-2002年)に搭載されたのが、今回の主役、RB26エンジンです。
スカイラインGT-Rへの搭載を前提とし、レースで勝つ為だけにわざわざ中途半端な2600ccという排気量で開発されたRB26でしたが、実はたった1台だけ、スカイライン以外の車種にも搭載されていたのです。
それは当時の日産が販売していたステーションワゴン『ステージア』。
正確には、オーテックジャパンが制作した特別仕様車、『ステージア オーテックバージョン260RS』でした。
RB26とは
RB26というエンジンは、正式には『RB26DETT』と呼ばれ、『Response Balance 2600cc DOHC Electronic Twin Turbo』の頭文字をとって名付けられた、2.6リッター直列6気筒ツインターボエンジンです。
R32GT-Rは、レースに勝てる最高のツーリングカーを目的に開発され、2.6リッターという排気量は出場していた全日本ツーリングカー選手権 グループAのレギュレーションに適用するために設定されました。
出荷時の馬力は280PSですが、グループA出場車両は600PSまで発揮。
国内だけでなく、海外レースでも優勝を重ねました。
また、チューニング業界でもスカイラインGT-Rは、ベース車両として一番に注力されるモデルとなり、RB26で500馬力以上のエンジンチューンは当たり前。
これほどのハイパワーチューニングも受け入れるエンジン設計や耐久性から、スカイラインGT-Rのチューニング競争にまで発展し、中にはRB26を他車種にスワップしたチューニングカーも登場しています。
そんなスカイラインGT-Rは、日本のチューニングカーのレベルを引き上げた功績から、RB26は国産エンジンのなかで名機とされています。
日産・ステージアとは
日産 ステージアは、1996年から2007年まで生産されたステーションワゴンです。
デビュー当初のWC34型は、スカイラインとベースが同じプラットフォームを使用していたため、駆動方式はFRまたは4WDを設定。
エンジンも当時のスカイラインクーペやセダンのRB型エンジンが採用され、GT-Rに搭載された電子制御トルクスプリット4WDシステム『ATTESA E-TS』も採用されました。
また、RB型エンジンにはRB26DETTも属し、他に2リッターのRB20E/20DE、2.5リッターのRB25DE/25DETも製造されています。
2001年のフルモデルチェンジに従い型式はM35型へと変更され、エンジンはV型6気筒の2.5リッターのVQ25DD/25DET、3リッターのVQ30DD、3.5リッターのVQ35DEに変更。
クロスカントリーモデルの『ステージアAR-X FOUR』も登場し、多くのユーザーから支持されていましたが、後継モデルは開発されることなく2007年に生産終了となりました。
走りのチューニングは一級品!まさにワゴン版スカイラインGT-R
国産車のハイパフォーマンスワゴンモデルは、実は珍しいものでもなく、スバル インプレッサスポーツワゴンWRX STIや三菱 ランサーエボリューションワゴンといった国内馬力規制ギリギリの280PSに達するモデルがありました。
しかし、ステージア オーテック260RSだけはオーテックジャパンによりチューニングされた、トップ・オブ・ザ・ツーリングワゴン。
エンジンはR33型スカイラインGT-RのRB26を搭載し、さらには5速MTやリアメカニカルLSD、マフラーなど、パワートレインと駆動系はGT-Rのものを流用。
ステーションワゴンはGT-Rのようなクーペに比べて、どうしてもボディ剛性が落ちてしまうため、いたる所にボディ強化がなされ、ストラットタワーバーやフロントクロスバー、リアトリプルクロスバーといった通常のステージアにない補強部品も追加されています。
また、ブレーキにもGT-Rと同じブレンボ製ブレーキシステムが採用され、サスペンションもステージアとRB26の組み合わせに適したチューニングが施されました。
さらに、BBS製アルミ鍛造ホイールとブリヂストン ポテンザRE101タイヤが装着される豪華な仕様です。
外装は専用エアロパーツだけでなく、スーパーファインハードコートと呼ばれる!水弾きが良く傷つきにくい高級塗装が用いられました。
当時、R33型スカイラインGT-Rが488万円に対し、ステージア オーテック260RSは450万円と割安だったため、相当高いコストパフォーマンスとなります。
スペック
日産・ステージア・オーテックバージョン260RS | ||
---|---|---|
形式 | GF-WGNC34 | |
全長×全幅×全高(mm) | 4,880×1,755×1,510 | |
ホイールベース(mm) | 2,720 | |
乗車定員(名) | 5 | |
車重(kg) | 1,720 | |
エンジン形式 | RB26DETT | |
エンジン種類 | 直列6気筒DOHC24バルブターボ | |
排気量(cc) | 2,568 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 206[280]/6,800 | |
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) | 367.7[37.5]/4,400 | |
駆動方式 | 4WD | |
トランスミッション | 5速MT | |
タイヤサイズ | 前 | 225/50R17 94V |
後 | 225/50R17 94V | |
新車車両価格[税込] | 4,465,000円 |
まとめ
ワゴンにRB26エンジンの組み合わせは、GT-R好き・RB好きにとって心が震え上がるほど魅力的で、マニアにとっては今でもほしいクルマです。
RB26のパフォーマンスを体感できるステーションワゴンでありながら、あまり乗られていないマイナー車という観点で見ても、誰ともかぶらない速いクルマというのがステージア・オーテック260RSの立ち位置でしょう。
そういえば、ここ最近の国産車ラインナップを見ていくと、これといったハイパフォーマンスステーションワゴン車は見当たりません。
GT-RのVR38DETTエンジンをステーションワゴンやSUVに載せた新モデルが出たら面白いかもっ!
やっちゃえ日産!!