大径タイヤに樹脂パーツ、高められた最低地上高などは揃っているものの、形ばかりになりがちなクロスオーバーSUVも少なくない中、4WDシステムの伝統と信頼性、そして実績なら負けていられぬと、乗用車ベースながら硬派なSUVとして人気なのがスバル・フォレスターです。
ここでは2018年7月まで販売され、MT車も設定される最後のスバルSUVだった4代目フォレスター(SJ系)を紹介します。
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スバル・フォレスター(SJ系)とは
1997年に初代モデルが登場したスバル”フォレスター”は、当初インプレッサベースでいかにもスバルらしい「ちょっとクロスオーバーっぽいステーションワゴン的なSUV」として海外ラリーでも人気を博すなど、独自ポジションのSUVとして人気になりました。
これは、かつてのホンダなどと同様、ハイルーフRVの生産能力を持たないメーカー特有な苦肉の策にも思えました。
しかし、そこはスバルですからモータースポーツでも実績豊富な、舗装路から悪路までステージを選ばぬシンメトリカルAWDシステムの恩恵でユーザーを増やしていき、2007年デビューの3代目(SH系)からようやく他社クロスオーバーSUV並の貫禄あるデザインへ転身。
ただしこのSH系は既存ユーザーに必ずしも受け入れられなかったようで、再び当時のレガシィなどスバル他社と共通イメージのクロスオーバーワゴン風フォルムへ回帰、2012年11月にモデルチェンジしたのが4代目SJ系でした。
デザイン回帰の効果は抜群で、先代末期には1,000台以下へ落ちかけていた平均月販が2013年には2,930台へとV字回復を遂げ、元から好評だったAWDシステムに加え新型エンジンや安全装備も充実、定番SUVへと返り咲くことに成功したのです。
2018年6月には6代目SK系へとモデルチェンジしたもののデザインがキープコンセプトなことから、SH系フォレスターも引き続き中古車市場で高い人気を誇っています。
スバル・フォレスター(SJ系)はどのような場面で活躍するクルマ?
基本、クロスオーバーSUVといえばプラットフォームも駆動システムも乗用車ベースで本格的な悪路走破性まで求められず、FF車すら設定されているほどですが、フォレスターは自慢のAWDシステムをフルに活かせる場面で大活躍する車です。
後述する電子制御システムで高い悪路走破性や、凍結路など極低ミュー路面でも高い走行安定性を誇るため、崩落した地形や起伏の激しい岩場など物理的に走行困難な地形でもない限り、タフに走り切る能力を持ちます。
もちろん舗装路でも高い安定性を誇り、2リッター直噴ターボを筆頭とする強力なパワーユニットを搭載した高速ツアラーであるのと同時に、意外と背が高くとも開閉しやすいパワーテールゲートなど日常的な使い勝手にも配慮された、あらゆるステージで頼れる相棒なのです。
スバル・フォレスター(SJ系)のオススメポイントその1:スバル最後のMTで操れるSUV
6代目(SK系)へのモデルチェンジで「ついにスバルからMTで操れるSUVが消えた」と嘆かれたように、SJ系フォレスターではほとんどのミッションがリニアトロニックCVTだったものの、2リッター自然吸気エンジン車の「2.0i」と「2.0i-L」へは最後までMT車が残されていました。
残念ながら2リッターターボとの組み合わせこそなかったものの、先代の5速から6速化された上にショートストローク化されたMTで「3ペダルとシフトレバーも使い全身で操る楽しみ」を味わえるスバルSUVは、どうやらこのSJ系フォレスターが最後になるようです。
スバル・フォレスター(SJ系)のオススメポイントその2:X-MODEなどで悪路走破性も充実
ほとんどCVTになったとはいえ今の世の中、本格4WDでもAT車は当たり前であり、SJ系フォレスターでもリニアトロニック車のほぼ全グレードで「X-MODE」と呼ばれる電子制御で悪路走破性を高めるシステムが搭載されています。
通常走行からボタンひとつでエンジン、ミッション、駆動システム、横滑り防止やタイヤ空転制御装置などを統合制御してしまう「X-MODE」で本格的な悪路走破性を持つほか、急な下り坂で危険な悪路を低速キープで降りれる「ヒルディセントコントロール」も標準装備。
先代から搭載したエンジン制御システム「SI-DRIVE」と合わせ、オン/オフ問わないフォレスターへの安心と信頼を支えます。
スバル・フォレスター(SJ系)のオススメポイントその3:アイサイトも段階的にバージョンアップ!
スバル車の目玉装備でありながら搭載の遅れていたフォレスターですが、SJ系からようやくステレオカメラセンサー式運転支援システム「アイサイト」が搭載されるようになりました。
初期はモノクロ映像のVer2.0でしたが、2015年10月の改良以降はカラー映像のVer3.0へ進化して車線逸脱抑制制御や、対向車を幻惑しないようハイビーム照射範囲を無段階調整するアダプティブドライビングビームを追加したほか既存機能も作動範囲が広がるなど進化。
車線変更時に後側方から迫る車を監視するスバルリヤビークルディテクションも追加されるなど、フォレスターではこのSJ系から予防安全性能が本格的に取り入れられています。
スバル・フォレスター(SJ系)のオススメポイントその4:世界最高レベルの安全ボディ
安全性の高さを売りにし始めた時期のスバル車だけに、進化したのはアイサイトなどハイテク予防安全装備だけではありません。
初代フォレスターから採用された、衝突時のボディ変形を最小限に留める「環状力骨構造ボディ」の発展版、全方位からの衝突に対し世界最高レベルを目指した安全ボディ「新環状力骨構造ボディ」最新版を採用。
他にも多数のエアバッグや、前面衝突時に巻き込むプリテンショナー付シートベルトは前席のみならず後席左右にも装備しており、安全性第一でスバル車を選ぶユーザーでも安心してオススメできるのはSJ系からです。
スバル・フォレスター(SJ系)のオススメポイントその5:命を繋ぐ現場でも信頼
SJ系フォレスターが安全性の面でどれだけ信頼されているかを象徴するエピソードのひとつに、イタリアをはじめ世界各地でドクターカーとして採用されている実績があります。
救急車などと比べ目立たない存在ではありますが、ドクターヘリも飛べないような悪天候では陸路でも急いで医師を急行させなければなりません。
そのような劣悪な環境でも、可能な限り速く確実に目的地へ向かう手段としてスバル車は重宝されており、フォレスターもステージや環境を問わない走行性能と安全性、積載能力によって、医療の世界でも貢献し続けています。
スバル・フォレスター(SJ系)のスペック紹介
維持費の方でも紹介したフォレスターの2リッター自然吸気エンジン車(型式SJ5)のうち、初期の”2.0i-Sアイサイト”を例に、スペックを簡単にご紹介します。
2013年式フォレスター2.0i-Sアイサイト
全長:4,595mm
全幅:1,795mm
全高:1.695mm
燃費(JC08モード) :15.2km/L
駆動方式:4WD
乗車定員:5名
まとめ
本格オフローダー風、クーペルック、はたまた4ドアクーペや本物のスーパーカーメーカーが作った輸入高級車までクロスオーバーSUVはさまざまなカタチが登場しています。
その中でも頑固一徹フラット4(水平対向エンジン)、自慢の左右対称シンメトリカルAWDや統合電子制御式のパワートレーン、充実した衝突安全&予防安全装備と、他の自働車メーカーの同クラス車より個性を前面に出しているのがSJ系フォレスターです。
先代で少々「他メーカーのSUVっぽいデザインにしてみようか」と色気を出した事があったものの、結局は「やはりスバルらしさが一番」とメーカーとユーザーの意見が一致したようで、今後もこのジャンルでは安心して購入できるクロスオーバーSUVの最右翼と言えます。
悪路を走る頻度こそ高くないものの、あるいはいつかは起きるかもしれない「いざという時に備えて」という意識が高い人にはもちろん、特に予防安全性能が備わったこのSJ系からは普段の公道でも起きやすいアクシデントで助かりやすい車ですから、いろんな意味で現在でも通用する中古車として、是非ともオススメしたい一台です。