スポーツ走行の必需品は、バケッドシートです。
高速走行時、身体のホールド性を高めるだけでなく、車体の軽量化やドレスアップ効果もありますが、不安なのは車検に通るのかということ。そんなバケッドシートの車検に関して解説します。
ドライバーの安全性を高めるバケットシートでも車検不適合なのか
バケットシートは、ドライバーの安全性やホールド性だけでなく、シートの軽量化やドレスアップ効果にも貢献します。
ドライバーが乗車した際、リラックスした状態のドライビングポジションを自然に作り出すため、走行会やレースに出場する方には必須アイテム。
背もたれが倒れるセミバケットシートであれば、標準搭載となっているスポーツカーも多く存在します。
では、セミバケットシートは車検対応とみなしてもよいのでしょうか。
また、安全性を高めるパーツという観点から背もたれが倒れないフルバケッドシートに交換しても、道路交通法には違反とならないのでしょうか。
セミバケットシートの場合
セミバケットシートの場合、保安基準試験をクリアし、それを証明する『保安基準適合』のステッカーが貼られていれば車検適合となります。
また、バケットシートを取り付けるには専用シートレールも必要となるので、こちらも保安基準に適合していなければなりません。
そのため、バケットシートと同様のメーカーのシートレールを購入するのが無難ですが、『カワイワークス』のような車検適合商品を販売するシートレール専門メーカーでも、保安基準に適合するレールを購入可能です。
フルバケットシートの場合
フルバケットシートの場合も保安基準適合ステッカーが貼られていれば、基本的に車検に通すことができますが、いくつか例外があります。
2ドアクーペや3ドアハッチバッグの場合、助手席もフルバケットシートにする場合は、後部座席を取り外し二人乗り仕様に構造変更届けを出さなければなりません。
なぜなら、フルバケットであればシートを倒すことができず、後部座席での人の乗り降りがスムーズにできないからです。
シートバックプロテクター無しだと車検不適合!?
保安基準適合のバケットシートを取り付けたとしても、意外なところで車検に不合格となる場合があります。
フルバケットシートの場合、シートの裏側は素材がむき出しになっており、表面が強硬だったり、セミバケットシートでも樹脂やカーボン素材になっているモデルがあります。
このようなシートでは、後部座席に人が乗った状態で急ブレーキをかけた時、運転席・助手席の硬い表面にあたって危険です。
そのため保安基準に適合した商品でも、シートバックプロテクターなど、後部席の乗員を守るためのクッション性がなければ、車検に通らないことがあります。
なお後部座席が元々存在しない、2シーターのクルマなら問題はありません。
シート裏側が素材むき出しだと車検不適合になる恐れも
しかし、一部の車両では後部座席があるにも関わらず、運転席/助手席の裏側に硬い素材がむき出しのシートが最初から搭載されているモデルがあります。他にも、有名メーカーが販売していたフルバケットシートでも「※本製品は保安基準適合品です。(シート背面用緩衝パッド無しでも適合致します。)」と説明分が添えられた商品も存在していました。
となれば、硬い素材が露出しても合法ではないかと考えてしまいます。
その点について道路交通法の中では、以下のように示されています。
このなかで「過度の衝撃を与えるおそれの少ない構造でなければならない」というのは、言い換えれば、「どのような素材であっても衝撃を少なくする構造であればよい」ともとれ、衝撃パッドが必要とは限らないとも読み取れます。『道路運送車両の保安基準』(座席)
第二十二条
7 前項の自動車の座席(第二十二条の四に規定する頭部後傾抑止装置を含む。以下この項において同じ。)の後面部分は、当該自動車が衝突等による衝撃を受けた場合において、当該座席の後方の乗車人員の頭部等に過度の衝撃を与えるおそれの少ない構造でなければならない。ただし、前項各号に掲げる座席の後面部分にあつては、この限りでない。
引用:国土交通省
つまり、バケットシートの裏側がクッション性素材でなくても、信頼できるメーカーの正規品で保安基準に適合しているのであれば、国への届出と認可され、そのデータはシートメーカーが全国の陸運局に提出しているはずです。
しかし、陸運局での車検で合格か不合格かは検査員が判断するものなので、検査員それぞれ認識が完璧に統一されているということはありません。ブリッドのシートは、保安基準に則った試験を行い、車検対応モデルは、その試験成績の書類を全国の運輸局、運輸支局に提出しています。
引用:ブリッド
不合格と判断された場合に、その場で検査員に保安基準に適合していると説明・説得しようとしても、自分の後ろに検査待ちのクルマがズラーッと並んでいるのをみれば、これから車検レーンに入ろうと待っている方にも悪い気がしてしまいます。
難しいところですが、不合格と判断されれば、時間をおいて陸運局の受付で相談して再度調査をしてもらうか、またはシート背面用緩衝パッドを装着するか、純正シートに戻して再検査する必要があります。
また、自社の工場で車検が通せる指定工場やディーラー工場であれば、バケットシート装着だと車検整備を断られることもあります。
それでも車検適合モデルを装着していれば、保安基準適合ステッカーが貼られていることを主張したりシートに付属している車検用の保安基準適合証明書を見せて説明すれば、車検に通してくれるはずです。
まとめ
日本の厳しい車検制度のなかで、カスタムカーと付き合っていくのは難しいことなのかもしれません。
たとえ、バケットシートのようにドライバーを運転に集中させて安全性に寄与するアイテムであっても、道路交通法という壁が立ちはだかり、合法か非合法か人によって認識が異なる場合もあります。
そのため、バケットシートやシートレールを購入するのであれば、高いお金を出してでも安心できるメーカーで購入すること、装着後は付属する保安基準適合証明書を大切に保管することは非常に重要です。