車の指定部品と指定外部品の違いって何?

車の指定部品と指定外部品の違いって何?

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クルマをカスタマイズする際、車検に適合させるため、そして構造変更検査や車検証の記載内容を伴わない程度の手軽なもので済ませるための見極めに必要なのが、「指定部品」と「指定外部品」です。

この違いを理解していないと、保安基準以前に車検をそのまま通せない、あるいは許されている部分もNGと誤解して、無駄に萎縮したカスタマイズになってしまう事もあるので、今回はその具体例を紹介します。

そもそも「指定部品」と「指定外部品」はなぜ生まれたのか?

昔はダウンサスひとつでも「マル改」だった

むか~しは今と違ってクルマのカスタマイズというのはちょっとした部品交換でも面倒な手続きが必要で、カスタマイズに馴染みのない整備工場やガソリンスタンドの古い整備士さんだと、2000年代に入っても「純正サイズ以外のタイヤはダメ」なんて言ったものです。

しかし日本の自動車に関わるアレコレが大抵そうであるように、カスタマイズについても外圧の影響で1995年に大幅な規制緩和が行われ、「そのくらいは軽微な変更だから普通に車検を通すガイドライン」が、思い切り緩くなりました。

それが運輸省(現・国土交通省)から1995年11月16日に通達された、「自動車部品を装着した場合の構造等変更検査時等における取扱いについて(依命通達)」。

この時から社外品のエアロを組んだり、ダウンサスを組んでローダウンしても構造変更検査や車検証の記載事項変更による「マル改」が不要になり、保安基準の適合範囲内なら普通に車検を通せるようになったわけです。

規制緩和の恩恵を受ける「指定部品」と、恩恵が限定的な「指定外部品」

ただし何でもかんでもOKというわけにはいかなかったようで、規制緩和の対象になったのが「指定部品」、対象ではあるけど制約がある、あるいは丸っきり対象外になったのが「指定外部品」と定められました。

なお、「指定部品」とは、以下のように記載されています。

ユーザーの嗜好により追加、変更等する蓋然性が高く、安全の確保、公害の防止上支障が少ないエア・スポイラ、ルーフ・ラック、ショック・アブソーバ、トレーラ・ヒッチ等別途定める自動車部品(以下「指定部品」という。)をいう。


指定外部品についてはアッサリしたもので、「指定部品以外の自動車部品」は全て指定外部品とされました。

それぞれ具体的にどのようなパーツが「指定部品」となり、それ以外の「指定外部品」になったのか、次項で具体的な例を紹介します。

「指定部品」の具体例


1995年11月16日通達時点では「別途定める」とされていた指定部品ですが、同日に発表された”「自動車部品を装着した場合の構造等変更検査時等における取扱いについて(依命通達)」の細部取扱いについて”で明らかになっています。

以下に、いくつかの具体例と、その要点を抜き出してみましょう。
(※以下が全てではないので、具体的には上記リンク先を参照してください)

【空気流を調整等するための部品(エアロパーツ)】

  • エアスポイラー
  • エアダム
  • ルーバー
  • フェンダースカート
  • その他エアロパーツ類
ここで「おや?バンパーがないぞ?」とお気づきの方もいると思いますが、苫小牧地区自動車整備協同組合の情報サイト、「Tomajisei-net.web」の「自動車部品装着Q&A」によると、暫定的に「指定部品と同様の扱いをしています」となっています。

また、車外に装着して車体形状の変更を伴うなら何でもエアロパーツというわけではなく、たとえばオーバーフェンダーは「空気流を調整等するための部品」に含まれず、指定外部品です。

同様にバンパー一体型オーバーフェンダー…ワイドボディキットのように指定部品と指定外部品の一体パーツも「指定外部品」となるので、注意してください。

【手荷物等を運搬するための部品】

  • ルーフラック
  • エンクローズドラゲージキャリア
  • バイク/スキーラック
  • その他ラック類
ここで気になるのは外部突起物規制で、国連協定規則に基づき2017年から厳しい規制が行われる予定もありましたが、結局は新車登録時の適応となり、登録後の継続車検でルーフラックそのものが外部突起物規制で弾かれることはなくなりました。

他にもバンパーガードやライトカバーなどさまざまな「指定部品」がありますが、以下のように保安基準へ抵触する場合は、指定部品であろうと認められません。

車体まわり関係の自動車部品を装着することにより、歩行者、自転車等乗員に接触するおそれのある車体外側表面部位は、外側に向けて先端が尖った又は鋭い部分があってはならない。

【走行装置関係の部品】

  • タイヤ
  • ホイール
これはインチアップなどサイズ変更が自由になった時点でポピュラーですが、最近だとキャンバー角に対するタイヤのハミ出し(いわゆるハミタイ)について保安基準の改正があり、指定部品か否かというより保安基準を意識した方がよいでしょう。

【緩衝装置関係の部品】

  • コイルスプリング
  • ショックアブソーバー
  • ストラット
  • ストラットタワーバー
「ダウンサス」や「車高調」が認められるようになった理由がこれで、ローダウンやリフトアップでは大いに活用されているわけですが、ここで2点ほど重要な注意事項があります。

まず1点目がショックアブソーバーやストラットの変更装着で、

走行中運転者席等において車両姿勢を容易かつ急激に変化させることができるものであってはならない。

具体的には車高可変機構を持つエアサスなどが該当しそうです。

もっとも、全国各地の運輸支局によって対応はかなりマチマチなようですが、少なくとも車検を通す時はエアサスのコントローラーを外し、車内にも置いておかないのが無難…と言われています。

2点目が「コイルスプリングは指定部品だが、リーフスプリングやトーションバーは指定外部品」ということです。

よくあるオフロード車のリーフスプリング交換で車高を変えたら必ず構造変更が必要という意味ではないのですが、車高の変化を伴うカスタマイズについては誤解した話も出回っているので、この後の項で説明させてください。

【連結装置関係の部品】

  • トレーラーヒッチ
  • ボールカプラ

【騒音防止装置関係の部品】

  • マフラー
  • 排気管

【その他】

  • 規定灯火器類
  • ミラー
  • 酸化触媒やDPFなどディーゼル微粒子除去装置
このあたりは「指定部品だけど保安基準の絡みで…」という例が多く、特にマフラーの消音装置(脱着式インナーサイレンサーなど)や、JASMA対応マフラーなど最新の保安基準を参照する必要があり、指定部品だからと安易に交換してよい部品ではありません。

部品取付方法も絡む、「そのまま車検が通るか」の誤解

変更が許される許容範囲

自動車部品を装着した場合の構造等変更検査時等における取扱いについて(依命通達)」では、部品変更に関わる車体寸法や重量の変更許容範囲について、以下のように書かれています。
全長 ±3cm
全幅 ±2cm
全高 ±4cm
車重 (検査対象軽自動車、小型自動車)±50kg、(普通自動車、大型特殊自動車)±100kg

なお、ここで注意しなければいけないのは、「許容範囲と車両区分は別」なことで、部品変更による寸法の許容範囲内に収まっていても、軽自動車や5ナンバー車がそれぞれ定められた寸法を超えるならば、車両区分の変更を伴う構造変更申請を行わねばなりません。

「軽自動車にエアロつけても、寸法変更の許容範囲内なら小型車(5ナンバー車)にしなくていいんだ?!」というわけではない事に、注意しましょう。

許容範囲を超えても大丈夫な場合と、そうでない場合がある

変更の許容範囲について、誤解の最たるものがリフトアップに関わるもので、「4cmを超えるリフトアップは全て車検証記載事項変更を伴うので、構造など変更検査を受けなければならない」というもので、実はそう単純な話ではありません。

まずこの許容範囲が適用される条件は以下になります。

指定部品を「恒久的取付方法」により装着した状態、又は、指定外部品を「固定的取付方法」若しくは「恒久的取付方法」により装着した状態において、当該自動車の長さ、幅又は高さが自動車検査証に記載されている値に対して次表の範囲内に含まれる場合


つまり上記の条件を満たす場合は許容範囲内に収める必要がありますが、それ以外は許容範囲を超えてもいいのです。

許容範囲の条件にも関わる「取付方法」の違い

1.簡易な取付方法
工具などを使わず、手で簡単に脱着できる取付方法で、指定部品でも指定外部品でも、構造等変更検査は不要で車体外寸が許容範囲を超えても問題ありません。

2.恒久的取付方法
溶接やリベットで固定…というより一体化させた状態で、指定部品でも指定外部品でも、「許容範囲を超えたら」構造等変更検査が必要になります。

3.固定的取付方法
簡易でも恒久的でもなく、ボルトやナット、両面テープや接着剤など、工具を使ったり多少の手間をかければ脱着可能な、一体化させていない程度の取付方法で、指定部品なら車体外寸が許容範囲を超えても構造等変更検査は不要ですが、指定外部品の場合は、「許容範囲を超えたら」構造等変更検査が必要です。

つまり、オフロード車のリフトアップなら、指定部品であるコイルスプリングを「固定的取付方法」で交換すれば、車高が許容範囲の4cmを超えて上がっても構造等変更検査は不要です。

一方、指定外部品であるリーフスプリングは、「固定的取付方法」でスプリング交換し、車高が許容範囲の4cmを超えて上がったら構造等変更検査が必要となります。

許容範囲内かどうかに関わらず、指定外部品はちょっと面倒な場合

なお、車高の許容範囲±4cm以内ならコイルスプリングでもリーフスプリングでも構造等変更検査は不要ですが、リーフスプリングの場合は車高に関わらず、純正以外へ交換するならどのみち「改造自動車審査」を申請しなければいけないため、コイルスプリング車よりは面倒です。

また、全高に関わる「指定部品」にはコイルスプリングのほか、ロールバーやルーフラックなどがあり、これらも溶接なリベットを使った「恒久的取付方法」以外で取り付ける分には、車高が許容範囲を超えても構造等変更検査は不要です。

一例としてリフトアップ時の車高変化を紹介しましたが、ローダウンやエアロパーツなどを装着した全長、全幅の変更も、全て同じ考え方になります。

いくらか制約は残っているとはいえ、「指定部品」の登場で、いかにカスタマイズが楽になったかわかりますね。

ここまでのおさらい

  1. 寸法や重量が許容範囲内なら指定部品か指定外部品か、どの取付方法かに関わらず、保安基準に沿っていれば構造等変更検査は不要。
  2. 寸法や重量が許容範囲外なら指定部品は「簡易な取付方法」か「固定的取付方法」なら、指定外部品は「簡易な取付方法」に限り、構造等変更検査は不要。
  3. 寸法や重量が許容範囲外なら指定部品は「恒久的取付方法」に限り、指定外部品は「簡易な取付方法」を除き、構造等変更検査が必要。
  4. リフトアップ車の場合、コイルスプリングやショックアブソーバーなどの指定部品を「固定的取付方法」で装着する分には許容範囲を超えてもよい(これらの部品で「簡易な取付方法」は、まずないと思います)。

カスタマイズはあくまで最新の保安基準を参照!


このように、「指定部品」と「指定外部品」で程度の差はあれど、かなりカスタマイズの規制が緩和されて25年以上経ちましたが、その間に騒音基準や排ガス規制など自動車を取り巻く環境は大きく変化してきました。

そもそも指定部品とは“ユーザーの嗜好により追加、変更等する蓋然性が高く、安全の確保、公害の防止上支障が少ない”部品のことなので、各種規制が強化され、自動ブレーキなど予防安全装備の義務化が進むと、それらを妨げるならたとえ「指定部品」でも保安基準その他、別な理由で認められなくなります。

これからクルマを楽しもうとする皆さんは、「これは指定部品だから大丈夫」といった先入観を持たず、最新の保安基準をよく理解してカスタマイズを楽しみましょう。

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