軽自動車にも普通車同様「スポーツカー」とは少しポジションが異なる「スペシャリティカー」があります。
実用大衆車ベースにスタイリッシュのボディを架装した車として実用車のホットモデルとは別に存在しており、そのフォルムを活かしてモータースポーツに使われる事も。
今回はそんな軽スペシャリティーをご紹介します。
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スズキ セルボモード
フロンテ・クーペ以来スズキのスポーツカー/スペシャリティカーとして設定されてきたセルボの4代目は、「セルボモード」名でアルトの上級車種として登場しました。
基本的にはアルトとメカニズム面でもほぼ共通で内外装に高級感を出している程度で、通常の上級グレードもアルトワークスieと同じSOHCターボ仕様のF6Aエンジンを搭載。
ただし、セルボモードを特別なスペシャリティとしたのはスズキ唯一の軽自動車用4気筒エンジン、DOHC16バルブターボのF6Bを搭載した「SR-FOUR」が設定されているからです。
ライバルのダイハツや三菱、スバルが軽自動車用4気筒エンジンを開発する中、スズキもF6Bを開発したわけですが、結局搭載車種はセルボモードSR-FOURのみ。
全く発展せずに終わったため、レアなエンジンになっています。
そのセルボモードですが、モータースポーツには全日本ダートトライアルなどに出場していました。
スズキ セルボモードSR-FOUR(FF・CN32S)
エンジン:F6B 直列4気筒DOHC12バルブICターボ
最高出力:64ps/7,000rpm
最大トルク:8.4kgm/3,500rpm
車両重量:700kg
車体寸法(全長×全幅×全高):3,295×1,395×1,380mm
中古車相場:3.9~35.8万円
ダイハツ リーザ
フェローやクオーレ、ミラといった一連の実用軽自動車を作ってきたダイハツが、1986年にデビューさせた初めてのスペシャリティカーがリーザです。
2代目以降、女性をターゲットにしたスペシャリティカーとなっていたスズキ セルボに対抗したもので、横から見ると卵型形状をしたボディと、CMに当時アイドル歌手だった早見優を起用してセルボを追撃しました。
内装もダイハツ軽自動車で初めてドアをフルトリム化するなど高級感を出しましたがターボエンジンを搭載したホットモデルも準備されています。
ベースとなったミラより短いホイールベースを活かしてジムカーナなどモータースポーツでも活躍。
660cc時代にもエンジンやバンパー等を換装して生産を続け、他メーカーが後輪駆動の軽スポーツABC(AZ-1、ビート、カプチーノ)を作る中、唯一FFスペシャルティオープンカーのリーザスパイダーをデビューさせ、異彩を放っています。
ダイハツ リーザTR-ZZ(L100V)
エンジン:EB26 直列3気筒SOHC6バルブICターボ
最高出力:64ps/7,000rpm
最大トルク:7.7kgm/4,000rpm
車両重量:610kg
車体寸法(全長×全幅×全高):3,195×1,395×1,355mm
中古車相場:24.8~29万円
ダイハツ オプティ
リーザ後継としてデビューしたダイハツスペシャリティ第2弾がオプティ。
初代の丸く愛らしいボディにターボエンジンは搭載されませんでしたが、DOHCエンジン搭載車やターボエンジン換装車が引き続きダイハツチャレンジカップなどジムカーナで活躍しています。
出典:https://wikimedia.org/
2代目は90年代以降の軽自動車としては珍しく、独立トランクルームを持つ5ドアスペシャリティとして登場。
ターボエンジン搭載車も設定された丸目4灯ヘッドライトのオプティ・ビークスが販売の中心で、ダイハツワークスだったDRSの手により全日本ダートトライアルにも出場。
2014年に閉鎖された仙台ハイランドのオフロードコースには、DRSのオプティが派手に転倒した事から「オプティコーナー」と名付けられたコーナーもありました。
ダイハツ オプティ(初代FF・L300S)エンジン:EF-ZL 直列3気筒DOHC12バルブ
最高出力:55ps/7,500rpm
最大トルク:6.2kgm/4,000rpm
車両重量:670kg
車体寸法(全長×全幅×全高):3,295×1,395×1,395mm
中古車相場:4.9~59.1万円
三菱 ミニカダンガン
三菱のホットハッチである、ミニカダンガン。
550cc時代の1989年に5バルブを実現、3気筒15バルブDOHCというスズキF5A(3気筒12バルブDOHC)を上回る凝ったメカニズムのエンジンを搭載してカーマニアを驚かせました。
(なお、トヨタのエンジン、4A-Gが5バルブ化する前の話です)
出典:https://wikipedia.org/
その後5バルブのまま660cc化、さらに2代目ダンガン(ミニカとしては7代目)では4気筒20バルブ化しています。
しかし、他メーカーが軽ホットモデルを積極的にワークス体制でモータースポーツに参戦させたのに対し、三菱はミニカで目立ったモータースポーツ活動をしなかったため、地味な存在なのが少々残念です。
三菱 ミニカダンガン(2代目FF・H31A)エンジン:4A30 直列4気筒DOHC20バルブICターボ
最高出力:64ps/7,000rpm
最大トルク:9.9kgm/3,500rpm
車両重量:700kg
車体寸法(全長×全幅×全高):3,295×1,395×1,475mm
中古車相場:14.9~75万円
ダイハツ ソニカ
ホットハッチとは一線を画する、高速長距離ツーリングを主体とした軽GTモデルとして2006年に登場したのがダイハツ ソニカです。
ダイハツの新世代エンジン、KFのターボ仕様KF-DETを他車種に先行して搭載し、CVTの搭載方法やギア比の最適化で、軽自動車としてはスムーズで力強い走りが特徴。
さらに、当時のトヨタ セルシオからベースを流用して軽自動車サイズに収めたとも言われた快適性の高いシートと相まって、コンセプト通りの「爽快ツアラー」に仕上がっています。
アクの強いフロントマスクや低いルーフが敬遠されたのか販売台数は伸びませんでしたが、中古車需要は旺盛で相場も高めです。
現在でもモータースポーツでは上位に入るポテンシャルがあるので、オートマ車でモータースポーツをしようという人にはオススメしたい1台ですね。
ダイハツ ソニカRSリミテッド(FF・L405S)
エンジン:KF-DET 直列3気筒DOHC12バルブICターボ
最高出力:64ps/6,000rpm
最大トルク:10.5kgm/3,000rpm
車両重量:820kg
車体寸法(全長×全幅×全高):3,395×1,475×1,470mm
中古車相場:14.9~88万円
オートザム キャロル
シャンテ以来軽乗用車から撤退していたマツダが、「オートザム」ブランドを立ち上げた際に復活させたのがキャロルです(360cc時代から通算すると2代目)。
基本的にはスズキ アルトからメカニズムやプラットフォームを流用した派生車種ですが、丸っこく可愛いデザインが登場当時(1989年)の他メーカー軽自動車とは一線を画しており、大ヒットとなりました。
当時、日産がBe-1やパオなどで限定的に実現していたレトロ調パイクカーを標準的な量産車とした初めてのケースで、初代は当時の他社軽スペシャリティ同様、女性ユーザーがターゲット。
オートザム・キャロルとしての2代目(通算3代目)ではイタリアンホットハッチ風のスタイルで男性ユーザーもターゲットにしており、マツダスピードからレーシーな外装パーツキットも販売されていました。
ホットモデルでもDOHCターボ車は設定されず、一部のユーザーのカスタムによりサーキット走行会などで時々姿を見せた程度で、オートザムブランドの廃止以降は完全にアルトのOEM車となっています。
オートザム キャロル ミレディ(初代FF・AA6PA)
エンジン:F6A 直列3気筒SOHC12バルブ
最高出力:52ps/7,000rpm
最大トルク:5.7kgm/4,500rpm
車両重量:590kg
車体寸法(全長×全幅×全高):3,250×1,395×1,415mm
中古車相場:6~75万円
三菱 ブラボー
かつて三菱が軽トラック/1BOXのミニキャブをベースに、常用1BOXワゴンとして販売していたのがブラボーです。
その最ホットモデル、ブラボーGTはミニカ・ダンガンと同じエンジンを搭載しており、ダンガン同様に4気筒660ccDOHC20バルブターボ・64馬力の4A30エンジンを搭載。
ミッションこそ3ATではありましたが、軽1BOXで唯一の64馬力ターボエンジン搭載車という、かなり過激な仕様でした。
もちろんモータースポーツへの参戦歴はありませんが、直線や高速コーナーに限ればホットハッチを追い回せる軽1BOXであり、パワーに余裕のある高速GTとしても記憶に残るモデルです。
三菱 ブラボー ハイルーフGT(FR・U44V)
エンジン:4A30 直列4気筒DOHC20バルブICターボ
最高出力:64ps/6,500rpm
最大トルク:9.6kgm/3,500rpm
車両重量:900kg
車体寸法(全長×全幅×全高):3,295×1,395×1,930mm
中古車相場:35~41万円
まとめ
他にも新規格時代のスバルR-1/R-2などスペシャリティ的な軽自動車はありますが、両車は当時のスバルでスペシャリティというより標準車のポジションを担うべき車だったので、ここでは除外しています。
また、セルボモードに紹介を譲ったとはいえ、5代目セルボもソニカとライバル関係にあるスペシャリティカーで、軽自動車ジムカーナのオートマクラスなどで比較的よく見かけるモデルです。
快適な高速ツアラーや高級感あるシティコミューターから、過激なホットモデルまで設定されているという意味では、軽スペシャリティは実用車やホットモデルより幅広く使えるモデルでしょう。
そのためもあって、どのモデルも程度が良いもの中古車相場が比較的高めですね。