R06A型エンジンを搭載するJB64Wジムニー、K15B型エンジンを搭載するJB74Wジムニーシエラ。
乗り始めてみると意外とモッサリとした動きで、アクセルを踏んでもあまり加速しない、もっとパワーが欲しい、そう思うユーザーは少なくありません。
色々と紐解いていくとJB64WジムニーとJB74Wジムニーシエラは、数字だけをみてもパワーは不足している部類の車種で、改善するには社外アフターパーツでチューニングをしていく必要があります。
とは言え何をどうカスタムすればいいのか?メリットは?デメリットは?色々と情報が多くパーツ選択にも悩みがつきものです。
今回はそんな悩めるジムニーユーザーに、パワー不足を改善するカスタムパーツや、メリット、デメリットについて「パワー系チューニング攻略」として徹底的に解説していきます!
なぜジムニーはパワー不足だと感じるのか?
エンジンパワーと車両重量
JB64Wに搭載されているR06A型エンジンは、HA36Sアルトワークスにも搭載されているエンジンと同型のエンジンで、低回転からの力強いトルクが持ち味が特徴です。
しかしながらアルトワークスの車両重量670kgに対し、JB64Wジムニーの車両重量は1,030kgと360kg重く、同じエンジンとはいえ重さの影響は非常に大きく、パワー不足やモッサリ感といったドライブフィールとなってしまっています。
ESPと電子スロットル
VSC(ビークルスタビリティコントロール)は今ではほとんどの車に搭載されており、スズキではESP(エレクトリックスタビリティプログラム)としてJB64Wジムニーには全車採用されています。
ESPは車両の姿勢制御を行うもので、スリップしやすい路面などで一輪だけブレーキをかけたり、トラクションコントロールを介入させることで、事故を未然に防ぐための装置です。
JB23Wジムニーの機械式スロットルからJB64Wでは電子スロットルが採用されていることもあり、アクセルペダルを踏んでからスロットルが開くのではなく、踏んだ量やその他の状況を加味してコンピューター側が必要な量のスロットルを開けるため、アクセルペダルを踏んでからの加速も遅い(レスポンスが悪い)ことが挙げられます。
事故を起きにくくする、燃費改善という部分で電子スロットルとESPの装備は避けて通れない部分ではあります。
例えば高速道路での合流などで、アクセルペダルを床まで踏み切った場合、機械式スロットルであればスロットル開度が100%となるところが、電子スロットルの場合95%といったように、ドライバーは全開にしているつもりでも機械的にはなっていない、という状況が生まれます。(車種によって電子スロットルの開度は異なります)
このような制御がされてしまうのは前述のESPが関係している部分で、「安全に走行させる」制御が行われているため、パワー不足と感じるジムニーにさらにパワーが抑えられてしまっている、という状況になっているのです。
タイヤとホイールの重量
前述の車両重量に関わりつつ、全ての車においてタイヤとホイールの重量は走行性能に大きく影響するパーツです。
ジムニーの場合、クロスカントリー車として様々な路面シチュエーションにも対応できるよう、純正状態でタイヤの外径は大きいサイズが採用され、ホイールも重いものが採用されています。
タイヤとホイールの重量についてのメリット、デメリットは以下の通りになります。
タイヤとホイールの重量が軽いメリット
・加速、減速に対して反応が良くなる
・加速減速が多い街中では燃費が良くなる方向になる
タイヤとホイールの重量が軽いデメリット
・良くも悪くも乗り心地に影響が出る
タイヤとホイールの重量が重いメリット
・高速道路などで一定速度を保ちやすくなる
・重い=素材が多いので頑丈
タイヤとホイールの重量が重いデメリット
・加速、減速に対して反応が悪くなる
同じエンジンを搭載するアルトワークスに対して車両重量が重い上に、重いタイヤとホイールを装着しているため、トルクフルなエンジンを搭載しているとはいえトルク不足やバワー不足を感じてしまう原因となっているのです。
パワー不足を解消するのに抑えておくべきポイント
・ECU(エンジンコントロールユニット)の書き換え
・サブコンピューターの取り付け
・吸気系パーツの交換
・VSCキャンセラーの取り付け
・消耗品のメンテナンス
・タービン交換orボルトオンターボ
ECU書き換え
ECU書き換えは、純正のECUのデータに対して、別のデータで上書きをすることで、トルクやパワーを上げることができます。
燃料の量や点火のタイミングなどを変更することで、純正とは違う性能を与えることができます。
ECU書き換えのメリット
ECU書き換えのメリットとしては、・別のパーツを装着する必要が無い(ECUそのものの脱着は必要)
・比較的コスパが良い
が挙げられます。
通常のカスタムパーツのようにハードウェアを装着するわけではなく、ECU内のソフトウェアに関わる部分であるため、余計なパーツを装着することなく、変化を体感することができます。
ECU書き換えのデメリット
ECU書き換えのデメリットとしては、・見た目での変化が無い
・データの内容によってパワーやトルクの出方が異なる
・エンジン関係のパーツの消耗を早める原因になる
が挙げられます。
見た目への変化ですが、ソフトウェアを書き換えているため、カスタム費用を投じているものの外見の変化は一切ありません。
データの内容についてですが、ある意味ECUチューニングの醍醐味でありつつ悩みの種となる部分で、書き換えるデータによってパワーやトルクの出方が異なります。書き換えるデータはアフターパーツのメーカーが用意していることがほとんどで、メーカーやショップが良いと判断したデータになるため、基本的にデータ書き換えをするショップやメーカーによってデータの内容は異なります。
そのため「あっちのショップより、こっちのショップのデータの方がパワーが出た」と言ったように後から良い状態(パワーが出る状態)になっていくことがあり、書き換えるデータを選ぶ判断が必要になります。
またECU書き換えに限らずですが、純正よりもパワーやトルクを上げるチューニングというのは、その分他の部分の負荷が増えることになるため、消耗品(プラグ、オイル、バッテリーなど)のメンテナンスについてはよりシビアに管理していく必要があります。
サブコンピューター取り付け
サブコンピューター(以下、サブコン)はメインとなるECUとは別に、独立したハードウェアを追加して、エアフロセンサーや圧力センサーに割り込ませて燃調や点火タイミングを変更できるデバイスを指します。JB64Wジムニーの場合はエアフロセンサーが無いため、圧力センサーに割り込ませます。
サブコンには予め製造メーカーが独自にセッティングしたデータが入っており、電装部品に割り込ませて装着する、というもの。
直接ECUのデータを書き換える必要がなく、お手軽さが特徴と言えます。
サブコンのメリット
サブコンのメリットとしては・手軽に装着することが可能
・比較的コスパが良い
が挙げられます。
サブコンは室内やエンジンルームに固定するパターンが多く、装着後に「カスタムした感」が得られることもポイント。見た目の変化と体感の変化を楽しめるカスタムパーツとなっています。
サブコンのデメリット
サブコンのデメリットとしては・コンピューター学習を無視する
・エンジン関係のパーツの消耗を早める原因になる
が挙げられます。
純正のECUはO2センサーから得られるフィードバック制御を行なっており、吸気温度、吸気圧力、エアクリーナーの汚れ、点火プラグの消耗など季節や車両の状態に応じて変化するものを学習をすることで、常に同じような状態をキープするようになっています。
サブコンを装着した場合、圧力センサーを直接補正しブーストアップを図るため、言い換えればフィードバックで学習する工程を一部無視する形となります。
そのためパワーアップを見込むことができる反面、その他のエンジンに関わるパーツには負荷が掛かるため、消耗品のメンテナンスについてはよりシビアに管理する必要があります。
吸気系パーツの交換
JB64Wジムニーに搭載されているR06A型エンジンにはサージタンクが備えられていません。
他車種には当たり前に装着されているパーツではありますが、量産時のコスト的な問題やエンジンルームのスペース的な問題でJB64Wにはサージタンクがありません。
そこで吸気系パーツ、特にサージタンクの代わりとなるようなパーツを装着することで、パワーアップとレスポンス改善を見込むことができます。
吸気系パーツ交換のメリット
吸気系パーツを交換することでのメリットとしては・アクセルを踏み直した後のレスポンスが良くなる
・パワーとトルクが向上する
・エンジンルームがカッコ良くなる
が挙げられます。
特にサージタンクが存在しないジムニーにとって、エンジンに近い場所に空気溜まりがないため、加速のためにアクセルを踏み直すシーンなどでは、すぐに空気をエンジンに取り込むことが出来ず、アクセルペダルを踏んでからエンジンに空気が送り込まれるまでに時間が掛かり、如実に加速の鈍さが顔を出します。
そこでエンジンに近い吸気配管にサージタンク形状の空気溜まりを作ることでレスポンスを向上させると共に、効率的に空気を取り入れられることでトルクとパワー不足を改善することが出来ます。
また吸気系パーツをカスタムするとエンジンルームに社外品ならではのアクセントを加えることができるので、見た目への変化も大きいことが挙げられます。
吸気系パーツ交換のデメリット
吸気系パーツを交換することでのデメリットとしては・吸気音が大きくなる
・アクセルオフ時のバックタービン音が聞こえるようになる
・専用のエアクリーナーになる
が挙げられます。
サージタンク形状の吸気系パーツやエアクリーナーそのものを社外品に交換をすると、吸気音やバックタービン時の吹き返しの音が聞こえるようになります。この点に関しては「音がすることでスポーティで楽しい」というオーナーや、「音がするようになってやかましい」と感じるオーナーがいるため賛否が別れるところ。
エアクリーナーを社外品に交換をすると、純正のエアクリーナーは使えなくなり、そのエアクリーナー専用の交換用クリーナーなどを用意する必要があります(乾式の場合。湿式は交換ではなく洗浄して再利用)。
エアクリーナーを交換したいときに自動車ディーラーでは売っておらず、量販店でも売っている場合とそうで無い場合があるため、エアクリーナーを社外品にする場合は、次回交換時のことも考慮しておくことが必要です。
参考動画
VSCキャンセラーの取り付け
VSCC(ビークルスタビリティコントロールキャンセラー)とは、スズキ車でいうところのESP(エレクトリックスタビリティプログラム、横滑り防止装置)による車両走行安定補助システムをキャンセルするデバイスです。
言葉だけを聞くと危なっかしいデバイスに聞こえますが、ESPを搭載しているジムニーの場合、通常状態であれば横滑り防止装置があることで、雨天時や降雪時の路面でもESPがあることで車両の挙動を安定させることができ、事故防止に繋がります。
ESPが関わる制御には、車速センサーなど車両に備え付けられている様々なセンサー情報を元に制御が行われており、前述の横滑り防止やトラクションコントロール、ジムニーであればブレーキLSDトラクションコントロールに活用されています。
ESPは車載のESP OFFボタンだけでキャンセルできる、と思われがちですが車載のESP OFFボタンでキャンセルができるのは横滑り防止のみで、トラクションコントロールの制御に関しては介入したままとなります。
トラクションコントロールは特にアクセルペダルから伝わるスロットル開度に関係していますが、「トラクションコントロール=タイヤを空転させない制御」となるためESPがONの状態ではしっかりとトラクションコントロールが介入するため、アクセルペダルを踏んでいても思うように加速せず、重たい、モッサリしていると感じるのではないでしょうか。
VSCCを装着することで、トラクションコントロールからくる煩わしさを解除することができ、街中のオンロード走行であればモッサリとした加速感が解消されよりキビキビとした加速感を得ることができます。
林道や河川敷などのオフロードの場合、タイヤを空転させることができるのでアグレッシブな走りができるようになるものの、ブレーキLSDが使用できなくなるため、所謂「対角スタック」といったタイヤが空転してしまう状況では、タイヤが空転し続けるだけとなるため、シーンによって使い分けが必要です。
参考動画
消耗品のメンテナンス
パワー系のチューニングを施していくと、純正状態に比べて消耗品の管理がシビアになっていきます。
例えばエンジンオイルやブレーキパッドなど、サブコンやECU書き換えなどでブーストが高い方向へ変更されたり、より速度を出しやすくなることでブレーキにも負担がかかるものです。
チューニングを進めていくとパワーを得られるメリットがある反面、消耗部品に関しては消耗が早くなる傾向にあるため、しっかりと車を管理していくようにしましょう。
タービン交換 or ボルトオンターボ
JB64Wジムニー/JB74Wジムニーシエラのパワーアップチューニングの究極系とも言えるのが、タービン交換またはボルトオンターボ装着になります。
JB64Wジムニーは元々ターボ車であることから、タービンサイズをより大きいものへ交換することで、タービンの種類にもよりますが約30〜40馬力程度のパワーアップを図ることができます。
※タービン装着するにあたり、タービン以外にも装着するパーツが必要となります。
JB74Wジムニーシエラの場合、K15B型のNAエンジンであることから、ボルトオンターボでのターボ化が挙げられ、約35〜40馬力程度のパワーアップが可能です。
交換工賃も含めるとタービン交換であれば約50万円〜、ボルトオンターボの場合は約80万円〜とかなり割高なチューニングにはなるものの、パワーを求めるなら避けて通れない道と言えます。
まとめ
数多くのカスタムパーツがあることは知っているけど、何がどのような作用をするパーツで、どうして必要か、というところまで掘り下げることで、よりジムニーとリフトアップに対する理解が深まればと思います。
今回のリフトアップに関わるパーツはモタガレで購入することができますので、気になった方は是非チェックして見てください!