「保安基準適合部品」「車検対応部品」って聞いたことありますか?クルマのアフターパーツを探しているとよく出くわすこのふたつのワード。
でも実は厳密な意味での「車検対応部品」というのは存在しないんです!保安基準適合部品=車検対応ではないというのは果たしてどういうことなのか?
車検制度上のあいまいな点や保安基準適合部品、車検対応部品の真実、さらに安心して車検を通すための第三者機関による認証パーツの例などを簡潔に解説します!
保安基準や車検などについては筆者含む自動車業界に慣れた人ほど逆に勘違いしやすい部分。
正しく理解して法令順守、確実に車検を通せるクルマに仕上げましょう!
「保安基準適合部品」「車検対応部品」って聞いたことありますか?
「保安基準適合」=「車検に通る」ではない!?
クルマに関連するアフターパーツの数々。
これらは日々進化し、ドレスアップやパフォーマンス向上のために非常に多くの選択肢があります。
しかし、すべての部品が公道での使用が許可されているわけではないのは皆さんもご存知の通り。
特にパーツ選びをしているときに「保安基準適合」と「車検対応」というワードを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
これらの謳い文句はあいまいな解釈になる部分も非常に多く、紛らわしいのが現実。
今回は、そんな保安基準適合部品と車検対応部品について解説していこうと思います!
【大前提】競技用パーツ:公道使用不可の部品もある。
まず大前提となりますが、車検を通過する(ナンバーを付けて公道を走る)ためには
「道路運送車両法」という法律に基づく保安基準に適合する必要があります。
保安基準にはさまざまな条項が盛り込まれており、
- 突起物規制
- 騒音規制
- 灯火類の色および光量などの規制
- 取り付け強度規制
これらは自車だけでなく周囲のすべての交通に危害を与えないよう厳密に定められたルールです。
いっぽうで、そもそも自動車用部品には公道での使用が認められていない部品も多く存在します。
いわゆる「競技用」パーツと呼ばれるモノで、クローズドのサーキットや展示イベント専用として販売されている部品たちです。
競技用パーツは公道で使用しないことを前提により自由な設計のもと作られており、これら競技用部品には、公道使用が禁止されていることがしっかりと明記されています。
もちろんこのような競技用パーツを装着したクルマで公道を走ることは不正改造にあたり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられる犯罪になります。
保安基準適合部品と車検対応部品って何が違うの?
実は保安基準適合部品=車検対応ではないという事実
国が定める保安基準に適合している部品なので、公道での使用が許可されているわけです。
さらに解釈を掘り下げると、その部品を製造するメーカーが「保安基準に適合しているクルマに正しい取り付け方をした場合、車検時に検査員が問題ないと判断すると思われる部品」を指します。
保安基準というのは部品単体だけでなく自動車本体にも関わっています。
そもそも「車検」とはクルマが保安基準に適合しているかを確認する為の検査で、クルマ自体が必要最低限の保安基準に適合している必要があります。
そして車検時に保安基準に適合しているか否かを判断するのは検査員の判断に掛かっています。
つまり、保安基準適合部品=車検対応とは言い切れないのです。
これら二つは必ずしも一致するわけではありません。
ここが非常にあいまいかつ解釈の難しい部分。以下で解説します。
厳密な意味での「車検対応」パーツはない!?
メーカーがきちんと保安基準を充たすように作ったパーツだったとしても、車検に合格する可能性が100%とは言い切れない以上、「おそらく車検に対応できるだろう」という範疇を出ないのです。
では保安基準適合品であっても、車検に通らないケースとは具体的にどういったものでしょうか。
パーツのメーカーは、装着するクルマ自体が「道路運送法上の保安基準に適合している」という前提で、パーツに車検対応・保安基準適合品の表示を出して販売します。
しかし、部品単位では保安基準に適合していたとしても、ユーザー自身によってメーカーの意図しない取り付け方をしたりすれば車検にはもちろん通りません。
簡単にいえば、保安基準適合部品を取り付けた後、別の部分が保安基準に違反することがあるため、保安基準適合部品=車検対応とは限らないというわけです。
また、上でも述べた通り車検を通過できるか否かを最終的に決めるのは車検場の検査員の判断。
部品自体が車検対応を謳ったものだとしても、検査員によっては取付が不完全だと判断されたり、安全ではないものと判断された場合は車検不適合となってしまいます。
きちんとした保安基準適合品でも、部品の経年劣化や個体差、取り付けているクルマのコンディション(バッテリーが弱っているなど)によって車検不適合とされてしまうケースも多々見受けられます。
保安基準にハッキリとした判断基準がない場合も検査員の主観による判断に委ねられるため、特にこういったあいまいなケースが起こり得ます。
例えば以前【灯火類についての記事】で触れたライトの色。
保安基準上では光の色は白または淡黄色と定義されています。
しかしその目安となるケルビン数は設定されているものの、具体的に白または淡黄色の範疇に入るのか?という最終判断は検査員の目に委ねられています。
保安基準適合証明書が発行されている場合この限りではありませんが、無い場合は保安基準に適合しているか否かを判断するのはやはり検査員です。
こうした検査員の裁量に委ねられる部分が多いという現状によって、後付け部品の解釈が難しく、あいまいになってしまっていると言えるでしょう。
確実に車検を通すにはどうすればいい?
極論を言うなら純正部品が最も確実(に近い)
©NISMO R32 GT-R用純正マフラー復刻部品
「自動車メーカー純正部品を新品で装着すれば(ほぼ)間違いなく車検適合できる」
アフターパーツのECサイトとして身も蓋もない話ですが、極論をいえばこれが最も確実な車検通過の方法です。
それでも100%ではなく(ほぼ)というのは、希にメーカー純正部品でも販売後に保安基準を充たしていなかったことが発覚し、リコールや回収になるケースがあるからです。
裏を返せば、その車種を設計し、クルマを知り尽くしたメーカーでも確実とは言い切れないほど保安基準適合というのは複雑で難しいものだといえるでしょう。
それでもやっぱりイジりたい!社外パーツで安全に車検対応するには?
そこで登場するのが、一般社団法人 日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会(以下、NAPAC)構成団体などによる認定部品です。
出典:https://www.napac.jp/cms/ja/napac/about
NAPACは、日本の自動車アフターパーツ産業の発展と向上を目的とした業界団体。
自動車部品メーカーや販売店、サービス業者、関連企業など多様な業界関係者が参加し、自動車用アフターパーツ業界全体の健全化や競争力強化、不正改造の撲滅などを目指して活動しています。
NAPAC構成事業部は大きく3つ。
- ASEA:(オートスポーツ・アンド・スペシャル・イクイップメント・アソシエーション)
モータースポーツに関わるパーツや用品全般の品質、安全性などを審査・担保する団体。
部品を各種テストしASEA基準制度として認定。
もともとモータースポーツ向けチューニングパーツが対象ですが、限界域でのパフォーマンスを追求したパーツを街乗りユーザー向けにアレンジしたパーツも対象範囲に含まれるなど、多岐に及んでいます。
- JAWA:(ジャパンライトアロイホイールアソシエイション)
出典:https://www.napac.jp/cms/ja/jawa/about
アルミホイールの安全性と信頼性を確保する目的で立ち上げられたのがJAWA。
具体的な活動は主に国土交通省の定める「軽合金製ディスクホイールの技術基準」に適合させること。
3種類のアルミホイール強度確認試験、さらに日本車両検査協会の検査の二重チェックで、ホイールの安全性と品質維持を図っています。
JAWA品質認定ステッカーのサンプル/出典:https://www.napac.jp/cms/ja/jawa/quality-auth
JAWAの試験に合格したアルミホイールには「JAWA品質認定証」ステッカーが貼られています。
さらにデザイン寄託制度によってホイールのデザインのコピー防止の活動なども行い、粗悪な模倣品の撲滅にも力を入れています。
- JASMA:(ジャパン・オートモーティブ・スポーツマフラー・アソシエーション)
JASMAは騒音や排ガス、熱害等の保安基準を遵守したスポーツマフラーの普及に努める団体です。
また保安基準外マフラーについては、競技用という限られた目的に沿った正しい使用方法と販売計画を啓蒙、指導し、健全な利用と適正な販売を目的としています。
JASMA認定マフラーはいわば保安基準クリアのお墨付き。
国の定める「道路運送車両の保安基準」よりも厳しい排気系パーツの自主基準(JASMA基準)を通過し、審査・登録・認定されたマフラーです。
JASMA認定プレートのサンプル/出典:https://www.napac.jp/cms/ja/jasma/certified-muffler-jasma
加盟するメーカーから申請された製品が保安基準への適合性があるか独自の基準を設け、公的試験機関等でテストをし、パスした製品だけに認定証明書を発行しJASMA認定プレートを製品に取り付けることを許可しています。
これらの認定を受けているアフターパーツは、実際の保安基準よりも更に厳しい自主規制をクリアしているため、車検対応できる可能性がかなり高くなります。(新品で適正な取り付け方をした場合に限る。)
また、品質や安全性もしっかりと担保されているため、認証パーツを選ぶことは様々な面で大きな安心に繋がります。
まとめ:保安基準適合、車検適合という表記の意味をよく理解して装着しよう!
まとめです!
- 保安基準適合部品を使う=車検適合ではない!
- 厳密な意味での「車検対応部品」は存在しない!
- 確実に車検を通すには「メーカー純正部品」か「第三者機関によるテスト済み認定部品」を!
保安基準適合部品や車検対応部品と表記された部品を使ったからといって車検に通る保証はないことは常に意識せねばなりません。
また、車検を確実に通過させるためには、100%ではないにしろメーカー純正部品の使用が最も確実。
アフターパーツを取り付ける際には保安基準や車検の項目を十分に理解した上で、第三者機関による認定照明書の発行されているパーツを選びましょう。
それでは、よいカーライフを!